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「思春期の心とからだ」新編集シリーズ

3巻 喫煙・飲酒と健康

◆性教育 ◆中学校以上用 ◆18分

タバコ、アルコールの摂取が、10代の大脳形成に、身体の健康に、いかに大きく影響するかを訴える。喫煙の章では、ニコチン・タール・一酸化炭素の有害性についてを、実験を通してみていく。飲酒の章では、イッキ飲みによる急性中毒死の危険や、飲酒運転の罰則規定について言及。元アルコール依存症者のインタビューも収録。

 

制作者・北沢杏子より 

  世界保健機関(WHO)は、30数年も前の1975年に、「禁煙教育は早い時期に学校と家庭で始めるべきであり、全教育課程を通してさまざまな段階で強化すべきだ」と勧告している。にもかかわらず、日本の学校や家庭での児童・生徒への禁煙教育はおざなりだ。その結果、現在の成人の喫煙率は男性32.2%、女性は8.4%となっており、喫煙が原因で死亡する日本人は年間129,000人(国際医学誌プロスメディシン発表)。これは、喫煙と因果関係のある肺がん、食道がん、心筋梗塞など、全ての疾患について、喫煙者と非喫煙者の死亡率を比較して計算した数値だ。喫煙開始年齢の10代初期に、しっかり禁煙教育を行なうことは、喫緊の課題と言えよう。
 更に本人が吸うタバコの煙(主流煙)によって、周囲の人びとが吸わされる副流煙(受動喫煙)が原因の疾患は激増。「受動喫煙はほぼ毎日」と答えた無自覚な喫煙者家庭は、10.7%にものぼっている(厚生労働省 調査)。

 またWHOは、「アルコールは年間250万人の死因に関係する」と警告。さらに、未成年者に酒を買いやすくしている日本の自動販売機の禁止も呼びかけている。飲酒は本人の健康だけにとどまらず、交通事故や暴力、自殺などにも多大な影響がある。飲酒運転による罰則なども、学校で十分に教える必要があるだろう。

 


3巻 喫煙・飲酒と健康  採録シナリオ


ナレーション(以下N) みなさんは知っていますか?「未成年者喫煙禁止法」「未成年者飲酒禁止法」という法律で、20歳までは、タバコもお酒も、吸ったり飲んだりしてはいけない、と決められていることを。
 というのも、これらが、いま盛んに発達している10代のみんなの脳を、ダメにしてしまうからなんですね。
 私たちの脳には害になるものは通さない、血液−脳関門※という関所がありますが、タバコの中のニコチンや、お酒の中のアルコールは、フリーパスでくぐりぬけ、脳に害を及ぼすのです。

●タバコの害● 
 タバコの煙の中には、200種類以上もの、有害物質が含まれていて、中でも、ニコチン、タール、一酸化炭素の3つは、最も有害な物質です。
 (街頭風景)……とも知らずに、平気でタバコを吸う若者たち。女性の喫煙者も増えています。

■ニコチンの害
 ニコチンは、血液の流れを悪くします。

 ここは、タバコの害に関する研究をしている研究室です。
 ウサギの耳に小さな穴をあけ、そこに再生された血管の血流の変化を観察します。
 (顕微鏡写真で説明)これが細動脈、これが細静脈です。
 ウサギの鼻先にタバコの煙を近づけて、ほんの少し吸わせてみると、血液の流れは どう変化するか?
 いま1秒後……5秒たちました。このように、はっきりと血液の流れが阻害されている、抑制されているということが、わかりますか?
 いま20秒。そろそろ回復し始めていますね。30秒。すっかり戻ったようです。
 この実験は、ウサギの鼻先をかすめたぐらいのニコチンの量でしたが、人の場合には、大量のニコチンが取り込まれるため、血管の収縮がもと通りに回復するのには、タバコ1本につき、30分〜60分もかかるそうです。
 ということは、1日に20本吸う人の毛細血管は、吸っている間中、収縮と回復を繰り返しているというわけ。体にいいはずは、ないですよね?

■タバコがやみつきになってしまうのはなぜか?
 (イラスト)タバコを吸うと「ああ、おいしい」とニッコリ。吸わないでいるとイライライラ。吸うとニッコリ、吸わないでいるとイライラ。ニッコリ、イライラ、ニッコリ、イライラ……、こうして、いったん吸いはじめると、やめられなくなるのも、ニコチンのせいなのです。

 では、やめられないからと、妊娠中の母親が吸い続けているとどうなるか?
 ニコチンの作用で、へその緒の血管が収縮して、胎児に送られる血液の量が減少。体重の軽い赤ちゃんが生まれてくる可能性が大きくなるのです。

■タールの害
 喫煙人形に火をつけたタバコをくわえさせて、エアポンプで煙を吸いこませます。1本吸わせてから、綿をつめた肺を観察。
 こちらの肺には、タバコの煙が入らないようにしてあるので、比較すると、わずか一本のタバコで、その差は歴然!肺がタールで黒く汚染されているのがわかりますね?
 1日20本吸う人が、1年間で取り込むタールの量は約コップ1杯分。タバコを吸い続けることで、この発がん性物質であるタールを、10年間も体の中に取り込むとしたら?20年間取り込むとしたら?どのくらいになるか、想像できますよね。その結果は?肺気腫による呼吸困難、そして肺がんです。

■一酸化炭素の害
 タバコを一服吸うと、300から400ppmもの一酸化炭素を含む煙が、肺に取り込まれます。
 私たちの体に最も必要な酸素を、せっせと運ぶのは、赤血球の中のヘモグロビンです。ところが、タバコの煙の中の一酸化炭素は、酸素を押しのけて、240倍という強さでヘモグロビンを乗っ取ってしまうのです。
 その結果、赤血球の中の一酸化炭素ヘモグロビンが増えて……近ごろ、なぜか「記憶力が減退したな」と思って頭の中をあけてみると?ほーら、一酸化炭素ヘモグロビンで一杯。こんな状態で……、

 吸う前は5分で間違いは2つ。吸ったあとは6分かかって、間違いも3つに増えました。
 これは、タバコの煙の中の、一酸化炭素のせいなのです。
 ここは東京の新宿駅――あの囲いの中の人たち、何をしてると思いますか?このホームでは、喫煙者は、この喫煙所と呼ばれるオリの中でしか、吸ってはいけない規則になっているのです。
 というのも、タバコを吸う本人はもちろん、その煙を吸わされる、まわりの人にも害をおよぼすからなんですね。

■主流煙と副流煙とは何か?
 お父さんが吸いこむタバコの煙を主流煙といいます。その煙の中の、ニコチン、タール、一酸化炭素の害については、もうわかっていますね?
 ところが、そばにいて吸わされるタバコの煙――これを副流煙(受動喫煙)といいますが、その害はもっと大きいのです。
 副流煙の中には、吸っている本人が吸いこむ主流煙に比べて、ニコチンが2.8倍、タールが3.4倍、(生徒の声「ヤバイな!」)一酸化炭素は4.7倍も含まれているんですよ。

 父親や母親がタバコを吸っている家庭の赤ちゃんは、気管支炎や肺炎になる率が、吸わない家庭の赤ちゃんの2〜3倍。これも、吸わされるタバコの煙、副流煙が原因といえるでしょう。


■喫煙と健康
 やめようやめようと思っても、やめられないタバコ―ずーっと吸い続けていると?ほら、体じゅうのピカピカしているところ(表紙のイラスト参照)、そこが全部ダメになるんです。これが全身におよぶタバコの害です。



 いま、みんなの前に、二つの道がひらかれています。
きれいな肺で、きれいな空気を吸う道と、よごれた肺でよごれた空気を吸い続ける道。 さあ、どちらを選びますか?
喫煙か健康か? YOUR CHOICE そう、選ぶのは、あなた自身です!


●お酒(アルコール)の害● 

 (イッキ飲みをする若者)これは、若者の間ではやっている“イッキ飲み”の様子です。これを見て、どう思いましたか?

■血中アルコール濃度と脳への影響
 この絵は「血中アルコール濃度」といって、飲んだお酒の量が増えるにつれて、血液の中に何%のアルコールが含まれるようになるのか?アルコールが含まれた血液が、脳にどのような影響をおよぼすのか?を示したものです。
 飲むアルコールの量を示すときには、ビール中ビン1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、ウィスキー ダブルで1杯(60ml)、缶チューハイ1.5缶(520ml)を、1単位としています。
 1単位のアルコールを飲むと、血中アルコール濃度は0.03%。それが脳に運ばれ、「ルンルン」と愉快な気持ちになります。
 2単位飲むと、血中アルコール濃度は0.1%に増えて、「ワーイ!」。
 3単位飲むと、血中アルコール濃度は0.15%になって、
「ベラベラベラ」と、しゃべりまくり、6単位飲むと、血中アルコール濃度は0.3%で、ベロンベロン。
 さらに飲み続けると、血中アルコール濃度は0.4%。立っていられなくなり……ついに0.5%に達して、バタン、キュー!そのあと、どうなるか?
 二日酔いで、頭はガンガン、胸がムカムカして、仕事を休む……というぐらいならまだしも、その場で呼吸麻痺を起こして「さようなら」―これが、アルコールによる急性中毒死です。

 では、なぜ、体の動きがコントロールできなくなるのか? 血中アルコール濃度が増すにつれて、アルコールが脳を麻痺させていく様子を見てみましょう(上図参照)。
 血中アルコール濃度が高くなるに従って、脳が麻痺し、爽快期、ほろ酔い期、酩酊期と進み、小脳までくると、小脳は知覚と運動機能などをつかさどる部位なので、体がゆらゆら、足ももつれて立っていられなくなり、遂にバタンと倒れる。
 もっと怖いのが、脳幹の麻痺です。ここは循環器系と呼吸器系の働きを調節している部位なので、麻痺が延髄まで達すると、呼吸と心臓が止まり、急性中毒死ということになるのです。

■飲める体質と飲めない体質があることを知ろう!
 アルコールは肝臓で分解される仕組みになっています。
アルコールが入ってくると、アセトアルデヒドという猛烈な毒性をもつ物質に変わりますが、アルデヒド脱水素酵素T型とU型によって分解され、酢酸になります。
 酢酸は血液によって全身をめぐり、無害な水と二酸化炭素に分解されて、体の外に排出されるのです。



■お酒を飲めない人がいることを知ろう
 ここで強調しておきたいのは、日本人の44%は、生まれつき、アルデヒド脱水素酵素U型の働きが弱い体質の人なんですね。だから、「練習すれば飲めるようになる」なんてウソ!「私は生まれつき飲めない体質だから飲めません」と、断ることが大切です。

■アルコール依存症とは?
 アルコール依存症とは、意志の弱い人、しょうがない人というのではなく、『アルコールなしでは生きていけない』という、精神疾患のひとつなんですね。
 いまは、アルコール依存症から立ち直って、同じ依存症の人びとの相談に乗っている、カウンセラーの岩本さんに、その体験を聞きました。

岩本さん 中学3年のときに友だちの家に泊りに行って、ふざけ半分で、おとなの真似をして酒を飲んだのが、きっかけだったですね。
 飲んでいるうちに酒量はどんどん増えてきて、私の場合、最後のころは、日本酒一升とウィスキーボトル1本を、食事もしないで毎日飲んでいました。
 家族は、最初の頃は、私の酒をやめさせるために、一生懸命努力してくれました。治療に通っているときも、病院に入院しているときでも、酒を飲み続けていた私に、家族は遂に絶望したのでしょう。妻は二人の息子を連れて、私の入院中に逃げて行きました。
 退院してから独りになった私は、逃げた妻と息子のことを恨みながら、その恨みを酒の肴に、また、前よりひどい飲み方をしました。
 しばらくして気がついてみたら、40歳を過ぎているのに、私の周りには誰もいなくなっていました。家族も、友人も、仕事仲間も……。そんなとき、「たった一人で俺は生きていけるんだろうか?」と思ったときに、「もう、酒をやめよう」と思いました。

 飲酒が原因の辛い人生……軽い気持ちで飲み始める年ごろのみんなにとって、ためになるお話でしたね。

■酒酔い運転、酒気帯び運転はキケン!
 最後に、これだけは絶対に覚えておいてほしいこと。
それは、お酒を飲んでの 運転です。
 お酒が入ると、荒っぽい運転、注意力が散漫、判断力が鈍り、視野が狭くなって、事故につながりかねません。
 いま、酒酔い運転、酒気帯び運転への罰則が厳しくなっています。お酒を飲んでの自転車も、取締りの対象だということを、知っていますね?

 飲酒による事故は、いつ起こすか予測できない。明日にも起こすかもしれない、あなた自身の問題なのです!

税別価格 各巻 12,000円 (ライブラリー価格 各 24,000円)

「思春期の心とからだ」新編集シリーズ 全4巻

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