いのちのはじまり
これが、みんなのいのちのもととなった卵子。直径0.14ミリ。
これもみんなのいのちのもととなった精子。長さは100分の6ミリ。この小さな小さな精子と卵子が合体していのちが始まるんだよ。では、どのようにして合体するのか、みてみよう。
受精と胎児の成長
おとうさんのペニス(いんけい)から、おかあさんのワギナ(腟)に送りこまれた精子は、卵管の太くなっているところで卵子と合体する。これを「受精」というんだ。
受精卵は、成長分化しながら一週間から10日ほどかかって子宮へとやってくる。そして、内膜の中に根をおろす。これが「着床」といって、妊娠のはじまりなんだよ。こうして受精から約40週──280日もおかあさんのおなかの中で育って生まれてくるんだよ。
人間にとって性とはなにか
人間にとって「性」はどんな意味があるんだろう?人類の歴史にさかのぼって考えてみよう。
われわれの祖先は、五百万年以上も前に、直立歩行のできるヒトへと進化した。そして両手に道具を持ち、力をあわせることで、自分より大きな獣を倒すことができるようになったのだった。
原始人たちはなんとかして、子どもたちに石器の作り方や獣の倒し方、火の使い方を教えようとした。原始人たちはことばを考え出した。そして、ことばを使っていろいろなことを教え、規則を作り、子どもを育て、人間社会の基礎を作ってきた。
恐ろしい氷期がやってきた。原野で生活していたわれわれの祖先は、雪と氷に閉ざされた洞くつの中に逃げこんで、いつ終わるともしれない寒さと戦わなければならなかった。
この恐ろしい飢えと寒さの時期に、死に絶えて地球上から姿を消してしまった動物はたくさんある。だが、われわれ人間は生き残った。わずかな食べものをわけあい、あるだけの毛皮を子どもや老人に着せかけ、人々は抱きあってからだをあたためあった。
もし、人々の間に愛情がなかったら……この長い氷期を生きぬくことはできなかっただろう。
人々はまた、「死」への恐れと悲しみも知ったのだった。死んだ子どもの魂を、もう一度呼びもどそうとして、その蒼ざめた頬に生気がよみがえるよう赤土を塗り、枕もとには命のつぎに大切な火打石の、もっとも美しいものをえらんで並べてやった……。「死の悲しみ」は、「愛の大切さ」を人々の胸にいっそう深く刻みつけた。
大切ないのち 愛と性
東京のある区役所で働く牧野ひとみさんと博明さんの二人が、助けあって子どもを生み、育てていく様子を追ってみよう。
二人は仕事のあいまをぬって、産婦人科医院へ。
出産に立ち会うための心得や、痛みをやわらげるマッサージ、ラマーズの呼吸法の練習など、講座に通ってマスターした。
いよいよ、出産の日。お産の苦しみも、二人でわかちあった。
助産師 深呼吸しなさい。
先生 吸って……はいて……吸って……はいて。
二人 (呼吸法)フーウン、フー、フー、フーウン。
博明 よしよし。
(胎児の心音が力強く打っている)
助産師 はい、深呼吸ですよ。
博明 もうすぐだよ。
助産師 深呼吸してからですよ。
(新生児の元気な産声)
助産師 見えた?
ひとみ 見えた!見えた!よかった!
(あかちゃんを胸に抱きしめて喜ぶ二人)
博明 がんばったね。
1週間たった。退院の日。(授乳するひとみさん)
ふしぎだ。この小さないのちが、きょうから家族に加わったなんて……。
働く二人は忙しい。朝は、ひとみさんが、あかちゃんを保育園へ。仕事がおわると博明さんが迎えに。
家事も育児も二人で分担しながら生きていく二人だ。
みんなもこうして生まれ、育てられて成長してきたんだ。
人間の性は、愛すること、そして生きることの喜びにつながる、とても大切なものなんだよ。