2005.1月

       
 

 

対人地雷禁止条約会議・ナイロビ

 

 
 

「性を語る会」代表 北沢 杏子

   
       

 

 「どうして爆弾が土の中にあるんだろう?」「戦争だったから」「戦争ってなんだ?」「人と人が殺しあうこと」「どうして殺しあうのかな?」「おとなの権力者が命令したから」──これは、ラオス・ナムトム村の子どもと私の対話だ。アメリカは1964年から9年間の間に300万トンもの各種の爆弾を、ラオス全土に落とした。

 私は国連人口基金のリプロヘルスIEC専門家派遣員として、'98年、'99年、そして'01年にラオス各地で避妊・エイズ・薬物防止教育のワークショップを行なったが、その最後の年に参加したシェンクアン省ジャール平原出身の青年の一人が、「故郷では、あの"秘密戦争”(確かに一般の人々には知らされていない)から30数年たったいまも、不発弾による死傷者があとを絶たない」と洩らしたそのひと言がひっかかって、翌'02年の雨季の前に、UXO(Unexploded Ordnance )LAOによる不発弾処理現場の取材に出発したのだった。

 2004年11月28日から5日間、ケニアの首都ナイロビで『対人地雷禁止条約会議』が開かれた。人の殺傷を目的とする地雷の生産・使用・保有を禁止したこの条約は'97年、カナダのオタワで調印式が行なわれ、2年後の‘99年に発効。その時点で76ヵ国だった加盟国は、現在144ヵ国に倍増した。ところが、地雷大国の中国・ロシア・アメリカ他42ヵ国が加盟を拒否。これが全面禁止の大きな壁となっている。

 対人地雷保有個数は中国1億1,000万個、ロシア5,000万個、米国1,040万個、パキスタン600万個、インド400〜500万個、韓国200万個(‘04版ランドマイン・モニター推定)。つまり中国・ロシアのように国境線が長い国は地雷を埋めるのに余念がなく、地域戦争の絶えないインドやパキスタンも加盟する意思はない。ロシアとミャンマーは現在も対人地雷を継続的に使用。生産国は昨年のネパールも加わって15ヵ国となった。

 対人地雷の死傷者は年間15,000人〜20,000人といわれ、子どもを中心に地域住民が犠牲になっている。私が取材したシェンクアン省立病院では院長が先に立って、その日担ぎ込まれた5歳の男の子と31歳の農夫の病室に案内してくれた。紙幅の都合で詳細は省くが、UXO・LAOシェンクアン省支部長のキンペットさんによると(187名のスタッフの手作業による撤去作業では)、「全面撤去には、あと300年は必要。とりあえず居住地域周辺から実施しているが、これも、50年はかかるでしょう」とのことだった。

 日本は100万個貯蔵していたが、'03年2月までに廃棄した──とある。地続きの国境を持たない島国の日本が、なぜ地雷を貯蔵する必要があったのか? ともあれ、今回のナイロビ会議でのケニア・キバキ大統領の代表演説「小国が地雷を放棄したのに、大国が拒否することは正当化できない」は、そのとおり!だと思う。またこの会議では、日本やドイツなどが、(対人地雷を貯蔵しているであろう)米軍基地を「管轄外」として放置していることも、「地雷使用国への支援」にあたると批判された。これもそのとおり!だ。「武器輸出三原則」もタガが弛み始めた。私たち市民は、ひとときも気を弛めてはならない。

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