世界各地の天災や人災、戦争、紛争の犠牲となって慟哭する市民を捉えた写真──写真誌『DAYS JAPAN』5月号には、DAYSフォトジャーナリズム大賞が掲載されている。その中で、3位のニナ・バーマン『米軍イラク帰還兵』の5枚の写真に、私はいま、強い衝撃を受けている。
K特技官(22)は、ティクリートでコンクリート壁の破壊を命じられ、崩れてきた壁で脊髄を切断、四肢麻痺となる。F軍曹(24)は、ハデッサ・ダム付近で砲撃により負傷、脳を損傷し失明。Z特技官(20)は、バグダッドで地雷が爆発。左脚が吹き飛ばされ、金属片が尻、右脚、両腕にめり込んでいる。M軍曹(35)はハリディアで、遠隔操作の爆撃により負傷。M特技官(20)はカルバラで、乗っていた装甲車が地雷に触れ爆発。顔、手、体に大やけどを負う。
M軍曹とM特技官は、やけどで顔が引きつれ物凄い形相なのにもかかわらず、「楽しかったよ。みんなで冗談を言い合い、ふざけ回っていた。相手の弾が俺たちに命中したら、仲間同士で頭上で手をポーンと合わせて笑ったものさ」と言い、「軍に残りたい。とにかく好きなんだ。僕は偉大な模範兵なんだよ」とも。手足を失ってもなお、「軍に帰りたい」と訴える負傷兵たち──、反戦のひとかけらもない、その屈託なさに驚かされる。
田村英治氏は写真評でこう述べている。「負傷兵たちが前線に戻ることは、新たに手足をなくす人々(民間人を含む)や、失われる命を更に増やすことにもつながる。負傷兵の写真から読み取るべきは、果たして兵士の勇敢さや使命感だろうか。(問題は)最新のハイテク武器と圧倒的な兵力でイラクに侵攻した米軍でさえも1,500人以上が死亡、10,000人以上が手足喪失などの深刻な怪我を負っているという戦争の異常性、それに、軍隊をよりどころにする人たちを大量に生み続ける米国社会の姿ではないだろうか」と。
ニューヨークタイムズのコラム(ボブ・ハーバート記者)は、こう書いている。
「米指導のイラク侵攻の結果、大量の罪のない人々が被った苦しみと死は、平均的な米国人の意識の中には入らないようになっている。この問題ほどブッシュ政権が話したくないものはない。報道側も、『戦争による民間人の苦しみ』というテーマを避けている」。「米国では、心を取り乱す戦争の画像や記事から自分たちは守られるべきだという考えが根をおろしている。我々は国家として戦争はしても、その戦争で自分たちの社会が激しく動揺することは望まない。平均的米国人の、戦争の巻き添えで死傷した民間人への関心の欠如は、驚くべきことだ」と。
負傷米兵の姿が伝える戦争の異常性、そして、戦争がもたらす苦悩を知ることで動揺したくないという平均的米国人のエゴイズム。DAYSフォトジャーナリズム大賞の写真を見ながら、こんなことが許されてよいのか、と胸が煮えたぎる日々である。