SEXワーカーネットワーク代表の代理、キャロル・ジェンキンスさんの主張
は、つぎのようなものであった。
工業先進国では、東南アジアの若い男たちを移動労働者として3K(嫌われる仕事)に就かせているではないか。先進国の経済は、彼らの労働によって支えられているといっても言い過ぎではあるまい。彼ら独身の若い男たちが、買春をするのは当然である。これを違法・非道徳として取り締まれば、売春組織は地下に潜行してHIV/エイズの温床となる。
これに対して、フォーマルな(法規制のない国の)SEXワーカーはHIVの予防に貢献していると言える。フォーマルであれば、政府とNGOの協力によるエイズの最新情報の提供、コンドームの配布、麻薬の注射針の交換、定期健診なども受けられるし、予防の知識を身につけたSEXワーカーが男の客の健康を管理し助言を与えることもできるだろう。これこそが、現実に即したエイズ蔓延の予防策である。
ところで最近問題なのは、インターネットや携帯による個人売春の拡大だ。かつてはSEXワーカーズ・スポット(売春婦の集まる場所)に行って、アウトリーチを行なえば予防効果が上がっていたのだが、現在では、カラオケダンサーやマッサージパーラーなど、察知不可能な売買春が増え、アウトリーチが困難になっている──と。
エイズ蔓延の最も大きな原因は、アジア・太平洋地域住民の貧困である。エイズ予防対策としては、まず少女たちに義務教育の徹底を!
そして、売春規制の、より幅広い、ゆるやかな法的措置、SEXワーカー自身が主導権をもち、HIV/エイズ予防のための健康保険の受益者となること、コンドームはもちろん、抗レトロウイルス剤・抗殺菌剤の無料配布を受ける権利、中間搾取者の排除、社会の一般市民がエイズおよびSEXワーカーへのスティグマ(恥・偏見・差別)をなくすことなど──なすべきことは山積している──というのが、報告者たちの主張の主流であった。
(来月号へ続く)