2005年11月13日、阪神大震災10周年を迎えて、「今後の防災事業に女性の視点を!」がテーマのウィメンズネット・こうべ主催の防災フォーラム『災害と女性―防災・復興に女性の参画を―』が、あすてっぷ神戸のセミナー室に300名の人びとを集めて開催された。パネラーは、中島絢子(“公的援助法”実現ネットワーク代表)、正井礼子(ウィメンズネット・こうべ代表)、もりきかずみ(NGO神戸外国人支援ネット代表)、尾辻かな子(大阪府議会議員)、スベンドリニ・カクチ(スリランカ人ジャーナリスト)、そして私、北沢杏子(「性を語る会」代表)というメンバーである。
■避難所で見たこと、聞いたこと
10年前の1月、あの暗闇のガレキの中で、避難所で、校庭の隅で、男たちによるレイプ事件は頻発していたのにもかかわらず、それらは一切報道されず社会問題として浮上してこなかった。阪神大震災が起こった直後、私は友人、知人の避難先を探しまわり、避難所の状況を目撃した。そして4月の1週間はボランティアとして神戸、尼崎、西宮の避難所になっていた学校の体育館を巡回し、避難先での人間関係や性に関するトラブルなどについて被害者たちと話しあったのだった。
5月、私は東京・毎日新聞本社ホールで開かれた『被災地で見えてきたもの──ボランティアたちの報告』にゲストとして招かれた。その日の朝、神戸地区の女性ネットワークのメンバーからFAXで、どっと近況が送られてきた。以下はその報告である。
ボランティアの女子学生がリュックをつかまれ半壊住宅に引き込まれてレイプされた/半壊の自宅を片付けに帰った主婦が泥棒と鉢合わせし、その場でレイプされた/避難所で昼間、乳児を抱えた主婦が外部から侵入してきた男からレイプ/半壊の屋根を覆うためのビニールシートをかぶせられ、ボランティアの女性が集団レイプされた/警察に通報しても、女性側に落ち度があったのだろうと言われる始末/行政に訴えると、市のイメージダウンに繋がるからと取りあってくれない/トラックの運転手同士が無線で、どこへ行けば土地に不案内なカモ(ボランティアの女性たち)がいると情報交換している/長い避難所生活でのストレスから妻へのDV、母親の幼児虐待が激増/仮設住宅の高齢者の健診に行った保健師がセクハラを受けている/産婦人科医から、レイプによる妊娠の中絶手術が激増した、との報告があった……など想像を絶する被災地の惨状だった。
■私たちは、防災対策に何を求めるべきか
9月、私はロサンゼルスに飛んで、ロスの大震災時に活躍したレイプ被害者のためのシェルターや強姦救援センターを取材した。紙幅の都合で割愛するが、今回の神戸の防災フォーラムで私が主張したのは、震災時のレイプは避けられないものと考え、(水や食糧の備蓄はもちろんだが)避難所以外のシェルターの設置、婦人科の専門医、およびPTSDに対応するためのカウンセラーの巡回派遣、特にレイプ後の妊娠の不安に備えての、希望する人に配布する緊急避妊薬ピル(レイプ後72時間以内に服用すれば着床しない)常備の必要性を強く訴えたのだった。
今年は、中越地震、インド洋大津波、アメリカ・ニューオーリンズのハリケーンと矢継ぎ早に災害が起こり、各避難所での子どもの人身売買やレイプなどの悲劇が、インターネットや海外ニュースで伝えられた。災害で最も大きな被害を受けるのは子ども、女性、高齢者、障害をもつ人びと、そして外国人労働者といった社会的弱者だ。今後の防災対策には、特にこうした弱者の人権擁護の視点を入れるべきであろう。
折も折、10月29日の新聞は、「自民党、新憲法草案を決定」を報道した。にも、9条の戦争放棄1項の条文には手をつけず、2項の「陸海空軍その他の戦力を保持せず、国の交戦権を認めない」を全面改悪。「自衛軍を保持し緊急事態においては、(軍事)活動を行なうことができる」としている。戦争はいやだ!
女への性暴力を繰り返すな!
わが子を、わが生徒を再び戦場に送るな! を叫び続けよう。
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