去る6月16日、社民党男女平等政策PT(代表 辻本清美議員)学習会の講師として招かれ、霞ヶ関の第二議員会館を訪れた。今回のテーマは『性教育バッシングの中で、国政レベルの政策として、どのようなことが実行可能か?』――あらかじめ議員側の質問を集め、そのニーズに合わせて話したいと連絡すると、15問ほどがFAXされてきた。それらをベースに構成した講座の要旨は、以下のとおりである。
1. 性と生殖に関する健康と権利(世界人口・開発会議、カイロ、1994年)は、地球上のすべての人びとの 願いであり権利である。行政は、この健康であることの権利を保障しなければならない。そのためには、 学校・家庭・地域で、性と生殖に関する正確な情報=性教育の提供が必要だ。
2. しかるに、性教育およびジェンダーの平等へのバッシングによって、学校教育の、小・中・高校“保健” 教科書から、性教育が削除された。10代の性の健康と権利についての正確な情報を提供しようとした熱 心な教員は、「指導要領にないことを教えた」として指導力不足教員のレッテルを貼られ、再発防止研修 会へ強制的に送られる。その結果、教員らは自主規制し、多くの問題を抱えた中・高生への指導を諦めて いるのが現状だ。
3. 性教育不在の中で、中・高生たちは過剰で歪められたマスメディアの性情報のシャワーを浴び、汚染され ていく。10代の望まない妊娠の中絶は年間46,000件を超え、性感染症の中でもクラミジア感染は100 〜120万人、16歳女子の感染率は17.2%と、世界でもダントツである。
女子のクラミジア感染症は無症候であることから、子宮内膜症、子宮外妊娠、不妊症の遠因ともなり、 少子化問題に拍車をかけている。さらに、性感染症に罹患していれば、HIV(エイズウィルス)の感染率 も5〜6倍に跳ね上がる。厚生労働省エイズ研究班は現在、年間推計3,000人がHIVに感染しており、 その43.3%は10代20代だと発表した。
4. 厚生労働省は、健康保険の財源からいっても気が気でない。AIDS患者/感染者の届出累計数は、現在
12,000人。感染者は障害者手帳の交付で、月額20〜25万円の医療費が保障されているが、これが発症 すると、1人に年間1,000万円はかかるという。
5. そこで、 厚生労働省は、地域の保健師を学校に派遣して、予防の情報提供を行なうべく取り決めを行な った模様だ。だが、学力テストに熱中する学校は、保健師による性教育をすんなり受け入れるだろうか? 厚生労働省と文部科学省のタテワリ行政の犠牲者は、10代の中・高生だと言っても過言ではない。
6. 行政はこれらの実情を真剣に捉え、自分のからだは自分で守る――保健行動を選択できる児童・生徒への IEC(インフォメーション・エデュケーション・コミュニケーション)部門を充実させる政策をとるべき である。日本の10代が不本意な青春時代を生きるのを阻止することこそ、緊急課題といえるだろう。
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