去る7月4日、霞ヶ関・弁護士会館クレオ(“私は信じる”の意)に、コスタリカ国際法律大学、カルロス・バルガス教授の話を聴きに行った。以下はその講演の要約である。
コスタリカは国土面積が日本の約1/7という小さな国だが、全体の25%の地域を国立公園、生物保護区、森林保護区に指定し、原生生態系の95%を保持。自然環境保全先進国として世界中に知られている。
1820年までは、スペインの植民地だったが、1821年の独立と共に自国の憲法を定めた。特筆すべきは死刑禁止を制定したことだろう。ついで1948年には軍隊を持たないことを法律で決めた。それまでは790万人の軍隊をかかえており、軍費は国家予算の85%に達していた。1948年の非核・非武装を法制定してから、その予算は教育と環境に注入された。
教育カリキュラムでは、1.環境 2.平和 3.紛争は対話で!を実践。小学生から「子どもも政治参入の権利を持っていること」「自分の明確な意見表明をする権利があること」のトレーニングを行なう。例えば、大統領選のときは、子どもたちにも(おとなと同じ)投票用紙が配られ、模擬投票を行なって、市民と政治の連携の重要さを認識させている。日本のように、学校で政策判断を学ぶことなく、20歳になったら投票せよ、というのは無理だろう。
基本的人権の授業は、とくに重要課題として組まれており、いじめや暴力で自分の人権が侵されたと感じた場合は、8歳から違憲訴訟を起こすことができる。一方で、人権意識は寛容の精神に支えられなければならないことも学ぶ。寛容の精神は、古くからコスタリカ文化の中で最も大切にしてきたものだ。隣国のニカラグアからの移民労働者も多いが、移民者への社会保障も、この寛容の精神で、コスタリカ国民と同様に行なわれている。
次に環境問題について話したい。前述のように軍費を教育と環境保護に注いだ結果、コスタリカはエコツーリズム(生物多様性を資源として活用する環境事業)として、これも世界の注目を集めている。エコツーズムによる外貨収得高は、1933年、それまでトップだったバナナ輸出を上回り、現在、最高収入源となっている。
「自国の軍隊を持っていなかったら、周辺国から攻撃される心配はないのか?」とよく訊かれるが、備えあれば憂いなしか、備えあるから憂いありか、よく考えて欲しい。コスタリカは軍隊廃止と非武装中立/平和・人権教育/自然環境保全の3本柱を国是として世界に発信してきた。最近、パナマも軍隊放棄の3番目の国になった。こうして国際貢献の実績も見えてきた。もちろん、核も持っていないから、核兵器廃絶運動を展開し、人類への貢献も行なっている。
私(バルカス氏)は、これから沖縄へ講演に行くが、沖縄のひめゆり部隊は、天皇のためにと、戦争の真相も知らされずに死んでいった。マスメディアも軍隊の命ずるままに報道規制を行ない、国民に真実を知らせることをしなかった。日本はいま、憲法改正・教育基本法改正の動きが活発化している。もし“9条”を変えて正規の軍隊を持ったら、それはアジア全域の脅威になるだろう。どうか、みなさん1人1人が軍隊を持たない勇気を持ってほしい。
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