2007. 3月

       
  死刑制度廃止の潮流の中で、日本はいま!  
 

「性を語る会」代表  北沢 杏子

 
       
   

 フランスは2007年2月19日、死刑廃止条項を憲法に書き加えた(上下両院議員による『改正』賛成票828、反対票26で承認)。“死刑禁止”で思い出すのは、1970年、私が北欧に性教育の取材に行ったときインタビューしたデンマークの新聞記者M・ダムゴ氏(45)との対話だ。

私 あなたは人間にとって何が最も望ましいと思いますか?
M 自由(フリーダム)だ!
私 自由?何からの自由?
M 政治からの自由、宗教、道徳、倫理的因習からの自由、民族差別からの自由だ。身近なことで言えば、自分自身への抑圧、無知、男性神話からの自由、そして性的自由だ。
私 性的自由とは、どのような自由ですか?
M すでに答えたが、政治、宗教、道徳、倫理的因習から開放されている人間は、性においても自由である。自由は人間の基本的権利であり、その権利を行使できる人間は、性的にも自由なのだ。

 このあと、私たちは自由が行使できるための法律について対話を続けた。


M ひとつの例を挙げよう。われわれの国は、100年以上前から死刑は禁止されている。最近では、刑務所に隣接してホテルを建てる計画があるほどだ。受刑者であっても、夫婦や愛人同士がお互いにセックスをしたいときには、そのホテルで望みをかなえられるようにする――これも性的自由・人間の基本的な権利だからね!

 これが、約40年も前の対話だったのだから驚く他はない。日本の最高裁は、フランスの死刑禁止可決の翌日、新たに死刑判決を出し、生存する死刑囚は現在、100人に達したと報道は伝えている。
 「人権機関・欧州会議」(46ヵ国)は、再三、死刑制度存続の日本、アメリカに警告を発してきた。ロシアは昨年、死刑執行停止を2010年まで延長すると発表。EU(欧州連合)に加盟したいトルコは、すでに2004年に廃止した。アラブ諸国でも、モロッコが死刑廃止の先頭を切りそうな気配だ。
 こうした世界の死刑制度廃止の潮流の中にあって、「死んでお詫びをする文化=切腹(?)」を挙げた法相もいた日本。NGO「死刑廃止連合」代表ミシェル・トーブ氏は言う。「死刑の廃止国や執行をやめた国が増加している中で、日本が2006年の年末に4人の死刑を執行したことは、世界で死刑廃止に取り組む人びとにとって、最悪のニュースになった」「民主主義、国際法の発展に責任を負う民主主義大国で、年間2人以上が処刑された国はアメリカと日本しかない」と。

 死刑は、テロとの闘いを過激にする。イラクのフセイン元大統領の死刑がそれを実証しているではないか。過去にテロに苦しんだ多くの国々(英国、スペイン、イスラエル他)は死刑を廃止した。ブッシュ大統領は対テロ協力を各国に求めるが、死刑存続国にそれを求めるのは“お門違い”というものだろう。日本の死刑廃止論者たちは(私も含めて)、国際圧力に望みを託すだけの非力者揃いなのだろうか?

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