2011. 4月

       
 


大地震は天罰。津波で我欲を洗い落とせ!

―― 石原慎太郎都知事の暴言 ―― 

 

 
 

「性を語る会」代表 北沢 杏子

 
       
   

 マグニチュード9.0という気象観測史上最大の3.11東日本大震災。津波は太平洋沿岸の各県市町村を壊滅させ、約3万人※もの犠牲者・行方不明者を出した。加えて、東京電力福島第一原子力発電所の大事故で、放射性物質拡散の情報不足から、次から次へと避難地への移転を迫られる人びと。連日、TVの映像で映し出される被災者の姿が胸を締めつける。そんな中にあって、3月14日の石原慎太郎東京都知事の発言は、あまりにも非道なので、記録しておく必要があると考え、新聞の報道記事を書き写す。

■石原都知事「やっぱり天罰」「津波で我欲を洗い落とす」
 石原都知事は3月14日、報道陣から大震災への国民の対応について問われ、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と答えた。
 発言の中で石原知事は「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本にはそんなものはない。我欲だよ。物欲、金銭欲」、「我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある。積年たまった日本人の心の垢を」と、放言したあと「被災者の方々は、かわいそうですよ」とも述べた。(朝日新聞 2011年3月15日 朝刊)

■都知事選の「後継者指名」一転――石原氏・松沢氏、同席会見
 同じ14日夜、石原慎太郎知事(78)は、24日の都知事選に出馬する旨発表。すでに立候補を表明していた松沢成文・神奈川県知事は一転、出馬を撤回した。(略)松沢氏は2月に石原氏から「今期で引退する、君しかいない。やってもらいたい」と立候補を促されたという。ところが3月11日の都議会で石原氏は4選出馬を宣言。松沢氏は「本当に驚いた。何が起こっているのか信じられない思いだった」と振り返った。
 石原氏は翻意の理由を「選挙結果がおぼつかない」などと述べ、松沢氏の当選が難しいと判断した結果だったと言い、その上で「1人の大事な友人より大事な東京を失うわけにはいかない」と語気を強めた。(朝日新聞 2011年3月15日 朝刊)――話を「津波で我欲を洗い落とす」に戻そう。

■知事の「天罰」発言、「謝って済む話ではない」と批判が殺到
 石原慎太郎知事は3月15日の記者会見で、「添える言葉が足らず、被災者、国民、都民の皆様を深く傷つけたことから、発言を撤回し、深くおわびします」と謝罪し前言を撤回したが、都民からは「被災者への配慮が足りず、怒りを感じる」「謝って済む話ではない」などの抗議の電話やメールが殺到した。24日の都知事選公示直前の「暴言」だけに、選挙戦に影響が出る可能性もある。(略)15日の謝罪会見は、都知事選を前に「火種を消そう」と素早く撤回の姿勢に転じた形だ。(朝日新聞 2011年3月16日 朝刊) 
 この非常識な暴言に比べ、国連の潘基文事務総長は、3月16日夜、菅直人首相と電話で協議。東日本大震災の地震・津波に加えて、福島・原発事故についても「国連として、いかなる支援も惜しまない。国連は日本と共にある」と述べ、国連関係機関からの多方面の支援を申し入れた。(朝日新聞 2011年3月17日 朝刊)

■紙パンツ、あかちゃんにあげてと5歳の女の子
 一方、今回の原子力発電所の事故で、役場ごと避難した福島県双葉町の町民1,200人ほどが避難生活をおくっている「さいたまスーパーアリーナ」での、幼い子どもたちの心あたたまるエピソードが紹介されている。
 マンガやおもちゃなどを無料で配る支援所で、折り紙が10枚ほど入った袋を受け取った女の子は、半分の5枚を袋から返した。「ほかの子の分だから」と。また、東京の5歳の保育園児の、「夜ねるとおしっこが出ちゃうので紙パンツで寝ます。でももう穿かない。お家がなくなっちゃって、体育館にいるあかちゃんに使って」との投書もあった。(朝日新聞 2011年3月26日 朝刊)
 「大震災は天罰。津波で我欲を洗い流せ」との石原慎太郎氏と幼児たちのけなげな気持ちを比較しながら、石原氏の暴言を忘れてはならないと書き留めた次第である。

※ 死者11,258人、行方不明16,344人。3月30日警察庁まとめ。


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