「(昔から)政治は男のやるものときまっていた。そして男たちは、ああでもない、こうでもないといろいろやってきたが、どうやってみたところで、戦争は次から次へと繰り返されるし、世の中の不合理は少しも改まらない。もはや男の政治はダメだから、女に任せてみよ」と、50年も前に言ったのは、『暮しの手帖』の創刊者、故 花森安治氏だ。まったくそのとおり。日本の男の政治、もたもたと何をやっているのッと、ぼやきたくなる昨今である。
そこに突如、女性3人の「ノーベル平和賞受賞」の快挙(2011年10月7日)。リベリアのサーリーフ大統領、同じくリベリアの平和活動家レイマ・ポウィさん、そしてイエメンの女性民主活動家タワル・カルマンさん――私は胸を躍らせて世界地図に見入る。
サーリーフ大統領は、アフリカで民主的に選出された初の女性大統領だ。長年、独裁政権への抵抗運動を続け、2006年、大統領に就任してからも国を立て直すために闘ってきた。この国には、鉄鉱石やダイヤモンドなどの豊かな資源がありながら、国民には行き渡らず、逆に政治腐敗の温床となり、利権争いから内戦に発展していた。サーリーフ大統領は、内戦時に国外に逃れて高い教育を受けた国民を好待遇で閣僚に採用する代わりに、成果が挙がらなければ情け容赦なく更迭する制度の導入など、行政を効率化した。
「よい政治とは、国民に説明できる透明性のある政治です。悪い政治とは、権力欲を持つ政治家が原因。リベリアはそうはさせない」と宣言。平和・経済・女性の地位向上を目指す今後のリベリアに期待したい。
平和活動家ボウィさんは、14年間に渡ったリベリアでの戦争を終結させるために、民族的・宗教的問題を越えて全女性を組織。非暴力で紛争の解決と平和への道筋を切り拓いた。また、イエメンのカルマンさんは、年齢も32歳と若い人権活動家だ。「アラブの春」と呼ばれる中東民主化運動の厳しい状況の中で、イエメンにおける女性の権利、そして民主主義と平和を求める闘争で指導的な役割を果たした。
アフリカでは、女性が労働で一家の生活を支えているのにもかかわらず、低い地位に置かれてきた。私が仕事の拠点にしているアーニ出版・ホールには、毎年アフリカから数カ国の女性たち(主に保健関係の女性指導者)が研修にやってくる。彼女たちが訴えるのは、いまだに男性優位社会、家父長制社会への不満だ。それぞれの部族長が、村の15〜16歳の少女たちを集めては、「女性は男性に奉仕するべきだ」と洗脳する。例えば、「性交時に女性の腟が潤っていると男性の快感が半減するから、このザラザラした砂粒状のものを腟に塗って男性に奉仕せよ」などと、のたまうそうだ。
このほど報告されたアフリカ諸国での「国連ミレニアム開発目標(MDG)」の達成状況は、中等教育・高等教育での男女格差は一向に解消されず、妊産婦死亡率は、出生10万人に対し1,000人と、世界最高レベルが続いているとのこと。今回の女性3人揃ってのノーベル平和賞は、そうしたアフリカ社会改革への強いメッセージになることと期待したい。
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