昨2011年10月31日、地球の総人口は遂に70億人に達した。UNFPA(国連人口基金)発行『世界人口白書2011』は、人口維持に必要な人口置換率は、女性1人が産む子どもの数を2.1人と算出している。ところが国によっては、6.9人だったり1.4人だったりと、多すぎたり少なすぎたり……。その結果、2100年には世界の人口は100億人、場合によっては150億人になる可能性もあるという。
前々回で出生率6.9人のモザンビーク共和国の場合は、女性の地位が低く出産の自己決定権すらない、つまりジェンダーの不平等が人口増加の原因であることを記した。これと対照的に女性の社会進出が男性と同等であり、子育て支援の福祉サービスが至れり尽くせりのフィンランドでは、出生率1.85人と、まあまあの線をいってはいるものの、第1子の出産年齢が(妊孕力の落ちた)平均37歳。不妊症で体外受精に頼る女性も増えているという現実を報告した。
■日本――減り続ける人口・少子高齢化社会
2012年1月30日に厚生労働省が公表した「人口推計」によれば、日本の女性1人が産む子どもの数は1.35人。それも30歳半ば以降の「駆け込み出産」が激増しており、今後は出産可能女性の人口が減っていくため、現在約1億2,800万人の日本の人口は、50年後の2060年には現在の2/3に当る8,670万人に落ち込むだろうと推計している。
ここで慌てふためいているのは内閣府だ。このまま出生率が減り、65歳以上の高齢者の数が約40%に達する50年後には、高齢者1人を現役世代1.3人で支えなければならなくなる(現在は2.8人)。となると、高齢者自身が負担する医療保険、介護保険料の値上げや、高齢者年金、社会保障の削減ほか「人間としての最低の生活」すら危ぶまれる時代がくるのではないだろうか?と。
■日本の女性は、なぜ子どもを産まないのか?
まず考えられるのは、不安定な雇用の状況が、若者の結婚、出産の大きな壁になっていることだ。総務省労働調査によると、25〜29歳で労働についていない「無業者」は17万人。人口推計に基づく生涯未婚率は、2030年の時点で、男性29.5%、女性22.6%となっている。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では、結婚相手がいない未婚者の割合は男性60%、女性30%。相手がいても「1年以内に結婚する場合の障害になること」で、最も多かったのは結婚資金がないだった。
すでに結婚しているカップルの間でも、「子育てにはお金がかかるため、若い世代には負担が大きすぎる。人口置換率2.1人なんてとんでもない。子どもは1人でたくさん!」といったところが本音のようだ。どうしても出生率を上げたいなら、『女性差別撤廃条約』に謳われているとおりの男女間の職種・賃金の平等、出産育児有給休暇の徹底、保育所への待機児ゼロ対策、子ども手当ての充実、小・中・高校・大学・専門学校の教育費の無償など、数え上げればキリがない。こうした子育て福祉サービスを実現してから、「さあ、2.1人産んでください」と国が言わない限り、日本の人口は減少の一途を辿るだろう。
■高齢出産とNICU(新生児集中治療室)不足
前々回で第1子の出産年齢が平均37歳というフィンランドの例を挙げたが、日本でも第1子出産年齢30歳以上が29歳以下を上回っており、35歳以上の出産数は15年前の2.3倍に増えている。女性の社会進出は、ジェンダーの平等という点で大いに期待するところだが、どうしてもある程度キャリアを積んだ上での結婚、出産となり、前述した「駆け込み結婚・出産」となってしまう。
妊孕率の落ちる35歳以降の高齢妊娠・出産の問題点として、2,500グラム未満の低体重児の割合が、この30年間でほぼ倍増。不妊治療にともなう双生児など多胎児出産も増加し、こうしたリスクの高いお産の場合、NICU(新生児集中治療室)での管理や治療が必要になるが、そのNICUのベッド数は、全国で僅か2,300。常に満床で、緊急搬送されてきた妊婦を受け入れることができず、転送されて母子共に危機的状況に陥る例も少なくない。
女たちは声をあげなければならない!日本の人口バランスを崩したくないなら、内閣府は、「喜んで2.1人の子どもを産めるよう、子産み子育ての社会保障を充実せよ!」と。
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