現在、私が拠点として活動しているアーニホールには、連日、看護専門学校3年生(10校、年間600人)がフィールドワークにやってくる。私が担当する講座は主に時事問題で、今回は若者にアピールする「エイズポスター合評会」とした。
ちなみに日本のHIV感染者、患者数は2012年3月25日現在21,723人(外国国籍者および薬害エイズ感染者も含め)――新感染者は、年間約1500人ずつ増え、累計は遂に2万人を突破したのだ。
さて、ポスターの@とAは、1991年12月1日の世界エイズデーを前にエイズ予防財団が作成したもの。BとCは、このポスターの表現に抗議し(その理由は後述するが)、「もうひとつのエイズポスターを創る」実行委員会※が、広く一般から公募した261点から選んだ最優秀賞(第1位)と審査委員賞(第2位)のポスター。Dは私が代表を務める「性を語る会」の国外会員から送られてきた“ドイツ・AIDSヘルプ”作成のポスター。Eはサンフランシスコの街頭で見つけて撮ったポスターの写真だ。
この6点のポスターを学生たちと批判、または評価しようというのが当日の課題である。 ※グラフィックデザイナー、作家、詩人、医師、衆議院議員、都議会議員ら18名。私もその中の1人だった。
@ A B C D E @パスポートには日本国外務大臣の押印がある。外務省は、日本人男性は海外に出かけるや買春をすると決め付け、「いってらっしゃい。エイズに気をつけて」のコピー。「人権蔑視だ」と男子学生は憤慨した。
Aこれもセックスワーカーを想定した全裸の女性を透明なコンドームの中に立たせ、強姦ならぬ視姦をほしいままにした女性差別、人権侵害の構図。
@とAに対する私たちの激烈な抗議運動の結果、21都道府県が掲示を取りやめたという経緯がある。
Bデザインも色彩もシンプルでいいけれど、コピーの「愛しなさい。使いなさい。」が命令調でよくないとの数人の学生評だった。
Cこのポスターの作者はデザイン専門学校の10代の女子学生。これが合評会の第1位に輝いた。照明ピカピカの中で全裸で踊るカップル。なーるほど、若者たちにはこういうのが受けるのか、とナットク。
D女性の手の中にコンドームがあるのが「強要しているようでちょっと……」と、数人の女子学生が批判。
E子どもが主人公のポスターは印象に残る。地球上からエイズがなくなるよう、祈りと希望を感じたと好評だった。さあ、あなたはどれを選びますか?
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