今回は、これだけは記録し、残しておかなければ!という私の信念から記すことをお断りしておきたい。
安倍晋三首相は、去る2013年4月23日の参院予算委員会時の答弁で、「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係で、どちらから見るかで違う」、「歴史認識を政治の場で議論することは、外交・政治問題に発展していく。歴史家・専門家に任せるべきだ」として、1995年の村山富市首相談話を否定した。
村山談話「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします(後略)」。
アジア諸国で2,000万人もの犠牲者を出したあの15年戦争に対する安倍首相の侵略・歴史認識発言に、韓国、中国、東南アジア、フィリピン他の国々が一斉に抗議の声を挙げるや、安倍氏は急遽、5月10日〜11日の記者会見で、「村山談話全体を歴代内閣と同じように引き継ぐと申し上げる」と述べた後、「ただし、そのまま継承していくわけではない」「戦後70年目の節目にあたる2015年に、村山談話を見直した“未来志向”の新たな談話を発表する」と言い放った。
折も折、日本維新の会の橋下徹共同代表は、5月13日、沖縄県での記者会見で「慰安婦」問題について、「あれだけ銃弾が雨嵐の如く飛び交う中で命をかけて走っていく時に、そんな猛者集団というか、精神的にも高ぶっている集団は、どこかで休息させてあげようと思ったら慰安婦制度は必要だ」と発言。米軍普天間飛行場を訪問した際には、米軍司令官に対し「(米兵たちの)性的エネルギーを合法的に解消できる場所は日本にあるわけだから、もっと真正面からそういうところ(風俗業)を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的エネルギーをコントロールできないんじゃないですか?建前論じゃなくて、もっと活用してほしい」と進言した。
これに対し、米司令官は凍りついたように苦笑し、「(兵士の買春は)禁止している」、「これ以上、この話はやめよう」と打ち切った。更に米国防総省・報道担当官も、吐き捨てる口調で「米国の軍人にはUCMJ(統一軍法規)が適用され、金銭の対価として生じる行為をすることは禁じられている。ばかげている!」と発言した。
「慰安婦」問題に関する1993年の河野内閣官房長官談話の一部を記しておく。「今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」。「政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」。「我々はこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視し、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」。
2013年5月7日、韓国の朴槿恵大統領はホワイトハウスでオバマ大統領と会談した際、「北東アジアの平和のためには、日本が正しい歴史認識を持たねばならない」と訴え、表立った表現は避けつつも「慰安婦」問題にも触れた。元「慰安婦」の女性を支援する韓国の人権団体の尹美香代表は「女性の人権を踏みにじり、日本による侵略戦争の犠牲者を冒涜するものだ」と強く批判。続いて6月2日、来日中の瀋基文国連事務総長は記者会見の席上、国連・拷問禁止委員会が、「従軍慰安婦を貶めるような言動を直ちにやめるよう求めている」ことに触れ、「周辺国に否定的な反応を引き起こしている。日本の政治指導者は、このことを自覚すべきだ」と批判した。
次々に声の上がる「慰安婦」問題―欧米メディアはこれをセックス・スレーブ(sex slave)性奴隷制と呼ぶ。私は4月、5月と2回にわたり、日本の植民地侵略と原住民女性の日本軍兵士への性的服務についてのフィールドレポートを書いてきた。再度読み返して、侵略とは何か? 女性への性的人権侵害とは何か?について深く考え、日本の政治家たちの今後の発言および行動に、厳しく注目して欲しいと思う。
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