2014. 8月
人権意識 最低!男性都議らのヤジ
今回はどうしても、人権意識欠如の男性都議らによる「セクハラ・ヤジ」について書き止めておかなければならない。それは6月18日(2014年)、東京都議会での塩村文夏都議(35歳 みんなの党)の一般質問の際に起こった。
(以下 塩村都議)第1子出産時の母親の平均年齢は、東京がずば抜けて高く、32歳に近い。不妊治療を受ける女性も増加している。また、女性が出産・育児の悩みを一人で抱え込んでしまいがちであり、こうした女性のサポートを……(と、言ったとたんヤジ) (あんたが)早く結婚した方がいいんじゃないか! 自分が産んでから(提言しろ)。 産めないのか? がんばれよ!(塩村氏、目に涙を浮かべ、声を詰まらせながら質問を続ける)。
都は、妊娠・出産に関して悩みをかかえる女性へのサポートを……
おい、動揺しちゃったんじゃねえのか! 不妊の原因は女性だけではなく、男性にも原因があります。(出産・育児に対する)男性の協力を得る難しさから、悩みが大きくなる女性たちへのサポートを、都は積極的に進めていくべきです。
ここで塩村都議の11分間の持ち時間は終り、自席に戻った彼女はハンカチで目を押えた。氏は、「(晩婚化)は東京特有の悩みなのに、バッヂをつけた議員らが否定する。残念だし問題だ」として、自信のツイッターに「心ない野次の連続」と投稿。翌19日までに約2,000回のリツイート(転載)が広がり、都議会には1,000件を越す批判が殺到した。
議場で暴言があった場合、議員は議長に“議事進行を止める動議”を求め、議会運営委員会を開くことができる。だが、動議はないまま、塩村氏の質問は終ってしまった。2日後の20日、みんなの党の議員4人および超党派の女性議員全25人は、吉野利明議長(自民)に抗議し、発言者の処分を求めた。
この問題は海外にも波紋を広げ、ロイター通信をはじめ米紙ウォールストリートジャーナル、英紙ガーディアン他は、“sexist abuse”(性差別人権侵害・虐待) と報道した。舛添要一都知事は「東京オリンピックも迫り、東京の魅力を世界に発信しようと懸命になっているときに、絶大のイメージダウンだ」と公言。といっている知事自身、18日の議場でにやりと相好を崩したというのだから呆れる。かれはメディアのインタビューに対し「野次は聞こえなかったが、塩村議員が笑い(実は苦笑)みんなが笑ったので、釣られて笑った」と苦しい弁解をしている。
6月23日、自民党の鈴木章浩都議(51)が記者会見し、「早く結婚した方がいいんじゃないか」とのヤジを飛ばしたことを認め謝罪。自民会派を離脱はするが、議員辞職はしないと発言した。というのも、他のヤジの「まずは自分が産めよ」「産めないのか」「子どももいないくせに!」など、複数の発言者が特定できないことを理由として。
そもそも都議会の定数127のうち、自民は59議席を占める最大会派だ。安倍政権の追い風を受けて、擁立候補が、史上初めて全員当選。2月(2014年)の知事選で自民が支持した舛添要一氏が当選するや、発言力は更に強まり、都議場では(国会でも)日常的に与野党間で激しいヤジが飛び交っていたとか。
そんな状況の中、塩村氏による議長への発言者の特定や処分を求めた申し入れは(発生から3日以内の申し入れという都議会規則によって)不受理となり、結果的に報道記者が傍で聴いたと証言した鈴木章浩都議一人だけで、この騒動は幕引きとなった。
我が国の晩婚、不妊問題、高齢妊娠・出産の悩みは、現安倍内閣の「女性問題意識の不備」に原因があると私は考える。安倍晋三首相は、ことあるごとに「女性の社会進出」を公言しておきながら、2010年施行の厚生労働省 産前・産後・育児・介護を行う(男女)労働者に関する法律の、育児休業法第5〜9条および、第16条2〜3の子の看護休業制度他の周知徹底はもちろん、事業者への罰則規定も定めようとしていない。
そのため、働く女性たちは、出産・育児休業を申し出れば、マタニティハラスメントにさらされ、出産後職場復帰しても、非常勤の職種しか与えられない。更に人事院の国家公務員男性5,000人対象の意識調査によると、上記法律で規定されている「父親の育休」を取った男性は、僅か3.7%。これに比べ、フィンランドでは「パパの育児休業(100日間)」取得は100%で、これを取らなかった父親には罰則も規定されている。
今回の「ヤジ事件」は、現安倍政権男性議員らの人権意識が、国際水準に達していないことを如実に露呈したと言えよう。