2015. 5月

 

沖縄県知事、首相に「辺野古撤回を!」

 安倍晋三首相は4月17日(2015年)午後、首相官邸で、沖縄県・翁長雄志知事と、約30分間の会談を行った。両者の会談は、昨年12月10日の翁長知事就任後初めて。安倍政権は“辺野古埋め立て”に反対する翁長知事との会談には応じないという冷遇を4ヵ月以上も続けてきた。が、ここにきて急に動き出したのは、安倍首相が訪米し、4月28日にオバマ大統領と会談するのを前に、「沖縄に米軍基地の必要性を認める日本政府の努力」をアピールするためと思われる。
 本稿は新聞2紙※の記事の中から、翁長知事の発言・主張で初めて知った過去の経緯などを記録に止めるべく、ここに記述する。

■翁長知事の意見と主張
@沖縄は、自ら進んで米軍に基地を提供したことは一度もない。普天間飛行場もその他の基地も、戦後、県民が収容されている間に、『剣銃とブルドーザーで』強制接収され、基地建設が行われたのだ。
Aこうして土地を奪っておきながら、『老朽化したから』『(市街地の中心部にある)世界一危険な基地だから』として、『沖縄が負担すべきだ。嫌なら代替地を出せ!』とは、こんな理不尽なことはない。
B1945年〜72年までの米国統治下、沖縄で最高責任者だったポール・キャラウェイ高等弁務官(1961〜64)は、「沖縄県民の自治は神話でしかなく、存在しないものだ」と発言したが、安倍政権は、沖縄に自治を認めなかったキャラウェイ氏と何ら変わりない。
C首相は16年前の1999年に、当時の稲嶺知事と岸本名護市長が「辺野古基地新設を受け入れた」と言うが、あれは軍民共同空港で、15年間使用期限が条件。加えて「日米基地使用協定」の締結などが前提条件だったが、当時の政府は沖縄県と充分な協議もしないまま、閣議決定を廃止したではないか。「16年前に受け入れたはず」というのは間違いだ。
D“県外移転公約”をかなぐり捨てた前知事仲井真弘多氏の「埋め立て承認」を錦の御旗に移転を強行しているのはお門違いだ。
E昨年の名護市長選、知事選、衆院選は「埋め立て」を争点としたが、与党は県内4小選挙区でいずれも敗れ、結果、党派を超えてオール沖縄による「埋め立て反対!」が圧勝。圧倒的な民意が示された、と言えよう。
F辺野古の米海兵隊キャンプ・シュワブの米兵は、連日、座り込み県民の抗議の中を出入りせざるを得ない状況だ。安倍首相は、こうした県民の民意を、オバマ大統領にきちんと伝えてほしい。

■安倍首相との対話は平行線―
 安倍首相との対談は、平行線のまま終った。安倍首相の発言は……、
@戦後70年の今日も、沖縄には大きな米軍基地負担をかけているが、沖縄の振興、発展は最重要。国家戦略として進めたい。
A米軍嘉手納基地以南の6施設・区域の返還も順調に始まっている。少しでも、沖縄基地の負担を軽くしたい。普天間飛行場の一日も早い危険性除去について、われわれ政府と沖縄県民の思いは同じだ。
B沖縄の思いを代表する翁長知事からの率直な話をうかがい、沖縄の未来をつくる上で、政府も共に歩みを進めていきたい。

 翁長知事の熱烈な主張に対して、なんと空々しい安倍首相の発言だろう。「共に歩みを進めていきたい」と言いながら、政府と沖縄間にある「沖縄政策協議会(全閣僚と知事が米軍基地問題および振興策について話しあう会)」は、翁長氏が知事になってから一度も開かれていないのだ。

■翁長知事の発言途中で、報道陣を退出させる!
 「はい、退出!報道、退出をお願いしまーす」30分間の会談の最初の10分間だけ許された報道の公開は、官邸側の命令で突然、翁長氏発言の途中で断たれてしまった。首相の「名護市辺野古の新基地建設が“唯一の解決策”」と重ねて述べた発言は、最後まで全面公開したのに、続いての翁長氏の発言は、途中で“報道退出”となってしまったという。
 翁長氏の会談後の記者会見によると、その非公開となった最後の部分は、「安倍首相訪米の際にはオバマ大統領に、沖縄県知事および県民は、辺野古移設計画に明確に反対していることを伝えていただきたい」という部分だった。「望まれていない場所には基地を置かない」と、(表向きながら)標榜する米国に対し、なんとか沖縄の民意を伝えたいとする翁長知事の要望に対し、首相からの言及はなかったという。翁長氏は5月下旬にも訪米し、「オバマ大統領に直接、訴える予定だ」と、唇をかみしめながら語ったが……。
 安倍政権は、沖縄県民の民意などに配慮することなく、菅官房長官が翁長氏から「上から目線だ」と批判された言葉「粛々※※」を再度使って、「粛々と、辺野古移設を進める」のではないだろうか?

※ 毎日新聞、しんぶん「赤旗」2015年4月18〜19日発行号
※※ 頼山陽の「鞭声粛々」―軍勢の静かな鞭音を現わす擬声語―集団で秩序を保ちつつ事を進行する様子を指す。文字本来の意味は「つつしむ」「おごそか」


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