2015. 7月
安倍内閣の「安全保障法案(戦争法案)」に一喜一憂する日々……
■3人の憲法学者の「集団的自衛権の行使は違憲!」に、安倍政権はオロオロ……
2015年6月4日、衆院憲法審査会に招かれた憲法学者3氏は、安倍政権が成立を目指す「安全保障関連法案」にレッドカードを突きつけた。
3氏の発言の要旨を(ごく一部だが)全国紙のコラム(朝日新聞 2015年6月7日)から転載しよう。
長谷部恭男・早大教授(自民推薦)「集団的自衛権の行使が許されるという点は、憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない。法的な安定性を大きく揺るがす」
小林節・慶大名誉教授(民主推薦)「違憲だ。仲間の国を助けるために海外に戦争に行く。憲法9条、とりわけ2項違反だ。政府が(これまで)積み上げてきたものが論理的に吹っ飛んだ」
笹田栄司・早大教授(維新推薦)「自民党政権と内閣法制局は、憲法解釈を(これまで)ガラス細工と言えるくらいギリギリで保ってきた。今回は、踏み越えてしまっている。違憲だ」
法案審議の序盤で出されたこの「レッドカード」に、自民党幹部らは神経をとがらせ、「(安保法制審議中だというのに)タイミングが悪すぎる」「自分たちが呼んだ参考人が、ああいう発言をしたことは、影響が大きすぎる」「そもそも、なぜ、こんな時期に憲法審査会を開いたのか」と、一斉に不安の声を上げた。加えて、菅 義偉官房長官は「違憲との指摘はあたらない。“違憲じゃない”という憲法学者もいっぱいいる」などと火消しに必死。
これに対し、上記の憲法学者 小林節氏は審査会後、「日本の憲法学者は何百人もいるが、違憲ではないというのは、2〜3人。違憲と見るのが学説上の常識であり、歴史的常識だ」と言い放った。
思わず新聞を手に拍手を送った私だが、「内閣法制局長官 横畠裕介氏、9日に公表した政府見解を説明」との記事(6月11日)に、またもや首をひねった。彼の言い分はこうだ。「憲法9条は(1959年の)砂川裁判で示されている通り、自衛権を否定していない。政府の憲法解釈との理論的整合性は保たれている。違憲ではない、合憲だ」。この横畠氏の言い分は、違憲だと報じた憲法学者らに対抗するために、憲法の番人である最高裁の判決を根拠に、今回の安全保障関連法案に“正当性があること”をアピールする狙いがみえみえだ。
■砂川事件とは?
1957年7月、東京都砂川町(現・立川市)の米軍立川基地拡張に反対した学生ら7人が、基地に立ち入ったとして「刑事特別法違反」の罪で起訴された事件。これに対し東京地裁が1959年3月、「米軍駐留は、憲法9条違反」として全員無罪としたため、検察側が最高裁に上告。最高裁は同年12月、高裁に差し戻し、全員有罪が確定したという事件である。最高裁は、7人の自衛権を認める一方、安保条約や在日米軍に対して、「(この事案は)政治性が強く、司法裁判所の審査にはなじまない」として、合憲かどうかの判断を避けたのだ。
それは、そうだろう。当時、日本は連合軍(米国)の統治下にあったのだから。この最高裁判決の裏話について、
青木未帆・学習院大学教授(憲法)は、「当時の田中耕太郎最高裁長官が、米国の公使らと非公式に接触するなど、最高裁判決を作る過程で米国の圧力が働いていたことが、米国の公文書から明らかになっている」と語っている(朝日新聞 6月12日)。さらに、半世紀も前の砂川事件まで持ち出して、“正当性を固持しようとする政府与党の対応”に対し、日本共産党の宮本徹氏は、「砂川判決は集団的自衛権に触れていない。砂川判決を集団的自衛権の根拠づけに使うのは、ご都合主義だ」と断じた。ここで、私はまたもや、新聞を手に拍手。
■改正(悪)「防衛省設置法」成立
……と胸を撫でおろしていたら、「防衛省の“背広組”(文官)と“制服組”(自衛官)のあり方を考える改正防衛省設置法が6月10日、参院本会議で成立」との、またまたショッキングな記事が(朝日新聞 6月11日)出た。つまり、今までは、文官が自衛官より優位だったのが、対等な関係に改正(悪)されたのだ。
そもそも、背広組を制服組より優位とする仕組みを作ったのは、過去の戦争で軍部が暴走したことの反省からだったのだ。なのに再び、自衛隊(安倍晋三首相は「わが軍」と口をすべらしている)が優位に立ち、さらに安全保障関連法案(戦争法案)が成立すればどうなる?!毎朝、毎朝、私は新聞記事に振りまわされている。