2015. 8月
安全保障関連11法案、衆院通過!どうなる?この「戦争法案」の行方―
2015年7月15日12時23分、民主党の辻本清美氏が「委員長、やめて!」と叫び、浜田(特別委員会)委員長が取り出した“議事進行用紙”の野党との奪い合い(写真参照)が続くなか、委員長はマイクなしの大声で、政府案を採択。安倍首相は無責任にも、15分前にその場から姿を消していた。
そして翌16日、自民・公明・次世代の党他の賛成多数で可決、論戦は参院に移った。これに対し、野党を代表して民主の岡田代表は、「戦後70年間、歴代内閣と国会が積み上げてきた憲法解釈を、一内閣の独断で変更したことは、歴史に残る大きな間違いだ」と批判、衆参両院で一切の審議に応じない方針を公表した。
しかし、安倍政権は今国会の会期を9月27日まで大幅に延長している。このあと参院で否決しても、衆院で与党が再議決できる「60日ルール」が9月中旬に適用できるから、安倍首相の計算どおりに行くのでは?と、全国各地で連日、「反対!」のデモが繰り展げられている。なかでも、俳人 金子兜太直筆の「アベ政治を許さない」のポスターは圧巻だ。
そもそも安倍政権は、安全保障関連の11法案を十把ひとからげにして、審議するように仕組んだから、国会での野党の質疑も「あれ」「これ」と飛んで、いたずらに時間が過ぎ、「もう116時間、このへんでケリをつけよう」との特別委員会の横柄な採決となったのだ。ここで、国民にはさっぱりわからないこの法案を、記憶するために11法案を記録しておこう。
@ 国際平和支援法案(新法) 自衛隊の海外での他国軍への支援を可能にする。
A 武力攻撃事態法改正案 集団的自衛権の行使要件を明記する。
B 重要影響事態法改正案 日本のために活動する米軍や他国軍を、地球規模で支援する。
C PKO協力法改正案 PKO以外にも、自衛隊による海外での復興支援活動を可能にする。
D 自衛隊法改正案 在外邦人の救出や米艦への防護を可能にする。
E 船舶検査法改正案 重要影響事態と判断したら、日本周辺以外での船舶検査を可能にする。
F 米軍等行動円滑化法改正案 米軍や他国軍が、存立危機事態と判断したら、役務提供をする。
G 海外輸送規制法改正案 存立危機事態と判断したら、海外軍用品の海上輸送を行う。
H 捕虜取り扱い法改正案 存立危機事態と判断したら、捕虜の取り扱いを厳重化する。
I 特定公共施設利用法改正案 武力攻撃事態と判断したら、米軍以外の他国軍にも、港湾や飛行場の利用を可能にする。
J 国家安全保障会議(NSC)設置法改正案 存立危機事態などへの対処を、国家安全保障会議審議事項に追加する。
以上が新法1、改正10の法案である。ここで、文中に「重要影響事態と判断したら」とか、「存立危機事態と判断したら」、「武力攻撃事態と判断したら」は、私が新聞記事※1に付け加えた文言であることを、お断りしておく。
というのも、改正案の根拠となる「重要影響事態」「存立危機事態」「武力攻撃事態」とは、どんな状況を指すのか?一体誰が判断するのか?安倍首相は7月15日の特別委でも「それらは政府、そして国会が判断する」と答えているが、過去の国会答弁で彼は、「私は(選挙で国民から選ばれた)総理大臣なんですから」と繰返し発言している……ということは、「存立危機事態」も「武力攻撃事態」も「重要影響事態」も、それと判断して、自衛隊を地球の裏側まで派遣させるのは、最終的に自画自賛の総理大臣安倍晋三氏の判断によるのではないか?と、疑惑の念に駆られるからだ。
「海外派兵で死ぬと(国の見舞金で)家が建つよね?」愛知県一宮市のKさん(32)は、陸上自衛隊に入隊した2002年7月の朝、母親が自嘲気味に言った言葉が「忘れられない」と語る※2。母子家庭で育ったKさんは高校卒業後、「公務員として給料ももらえて、人の役にも立てる」と自衛官を志願した。が、面接官から突然、「あなたは、アフガニスタンやイラクに行けますか」と問われ、つい「大丈夫です」と答えてしまったという。Kさんは入隊2年後に、部隊内のトラブルで依願退職したが、「現在、米軍と自衛隊は同じ弾薬を使っていて、法改正すれば、すぐにも供給できる。日本の弾薬を使って米軍はもとより、後方支援の自衛隊が人を殺してしまったら……と考えると、本当に怖い」と語っている。
「戦後最も戦場に近い海外派遣」といわれたイラク派兵(2008年5月)の経験と教訓を克明に記録した文書を入手した穀田恵二衆議院議員は、7月10日の特別委員会の席上、「国会の資料では、同じ文書が黒塗りになっている」と、指摘。黒塗りの部分は「隊員に対して指揮官は、“最終的に危ないと思ったら撃て!”と指導していた」とあったと告発している。この2つの実話は、いまに「積極的武器使用容認」と「自衛隊員の戦死」に発展するのでは?と心配するのは、私だけではあるまい。
※1:朝日新聞 2015年7月16日 3面
※2:しんぶん赤旗 2015年7月11日 1面