2015. 9月

 

「私は」の主語が一切ない!無責任な戦後70年「安倍談話」

 8月14日(2015年)、「安倍談話」が閣議決定され、安倍首相が発表した。新聞掲載の「談話全文」を読むと、やたらと引用、間接表現が目立ち、安倍首相自身の謝罪や決意の心が伝わってこない
そらぞらしいものとなった。まず驚かされたのは、冒頭の次の記述である。

 百年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました。(略)植民地支配の波は、十九世紀、アジアにも押し寄せました。(略)(日本は)アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。(そして独立国として戦った)日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。

 と、「あなた方欧米諸国こそ、われがちに途上各国を植民地にしてたじゃないか!」とでも言いたいのか、とんでもない言いがかり。「わが国が、台湾や朝鮮半島を植民地にしたのは、そのあとですよ」といわんばかり。しかも、「日露戦争は、植民地支配のもとにあった多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけた」という我田引水の記述には、唖然とさせられた。

 また、日本が侵略戦争(これも“事変、侵略、戦争”とぼやかして記述)に至った理由を、

 世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと、(略)満州事変、そして国際連盟からの脱退と、戦争への道を進んで行きました。

 と、日本が戦争にのめり込んでいった理由を、欧米諸国による経済制裁のせいだとして責任回避している。そもそも「満州事変」は1931年、日本の関東軍が起こした柳条湖事件が発端。関東軍特務機関の手で清朝の皇帝溥儀を連れ出し、翌1932年3月、中国東北部に溥儀を皇帝とする満州国を建国。これを機に、日本は着々と、中国を侵略していったのではなかったか?

 2000年12月、東京で開かれた「女性国際戦犯法廷」で、20世紀最大の人道に対する罪として裁かれた日本軍・性奴隷制「慰安婦」問題―あれほど韓国およびアムネスティーインターナショナル他が謝罪と補償を求めているにもかかわらず、

 私たちは、二十世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます。(略)二十一世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしてまいります。

 加害国だった日本が、「女性の人権が傷つけられることのない21世紀とするため、世界をリードしていく」など、謝罪とは真逆な記述になっている。

 今回は特に、「国家が永遠に謝罪を続けるつもりはない。このへんで終止符を打ちたい」とばかりの、下記の記述が目立った。

 日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。
 (それでいながら)私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります。

 と、過去の歴史認識を重視しているかの如き記述は、ドイツの故ワイツゼッカー大統領が、第2次世界大戦敗戦後40年にあたる1985年5月8日に、連邦議会の席上で行った演説「罪があってもなくても、我々全員が過去を受け入れなくてはならない。過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」に習ったのだろうが、なんとなくそらぞらしい感じを受ける。

 約3,300字に及ぶこの「安倍談話」に対し、海外の有識者およびメディアは、厳しい批判を投げかけている。
 「“おわび”は歴代首相の引用にとどめ、安倍氏自身の新たな謝罪は示さなかった」(米ニューヨークタイムズ) 「先の世代に謝罪を続ける宿命を負わせてはならないと、今回で終止符を打とうとしている」(米ワシントンポスト) 「植民地支配とは永遠に決別すると言いながら、朝鮮半島植民地下の苛酷な統治に一切触れていない」(韓国 有識者) 「歴代談話の最も重要なキーワード、侵略・植民地支配・謝罪は、全体にちりばめただけで、安倍首相本人の「心」が見えてこない」(中国 有識者)。
 戦後70年「安倍談話」―皆さんは、どう感じましたか?


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