2015. 10月
国民投票法・公職選挙法の投票年齢「18歳に引き下げ」を、どう見る?
■18歳選挙権―「教員に罰則」との自民に、民主猛反対!
2015年6月17日、選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる「改正・公職選挙法」が、参院本会議全会一致で可決、成立。この法改正に対し、自民党が安倍首相に提出した提言は、「政治的中立を逸脱した教員に対し、罰則を科すための教育公務員特別法などの改正」だった。その理由は、「学校に政治的イデオロギーが持ち込まれ、生徒が混乱することを断固として避けるため」であり、加えて、「教職員が偏った指導を行うことは、わが国の民主政治の根底を揺るがす不正で、断じて許されない」としている。
一方、民主党は8月20日(2015年)、菅 義偉官房長官に提言を出した。それには、教育公務員特別法に罰則規定を盛り込めば、「教員に罰則を意識させ、自由な言動が押さえ込まれる」「教員が萎縮し、主権者教育の充実に水を差す」故に、「教職員に過度のプレッシャーや罰則をもっての威嚇を行ってはならない」と明記。
更に、政府が今秋にも全高校生に配布する副教材をめぐっても紛糾。政府側は、「副教材は高校生に、投票に向けての政治や選挙の仕組みなどの知識を身につけさせるのが目的」だというが、その内容については明らかにしていない。これに対し民主党は、「作成・配布は多様な意見を取り入れつつ進め、作成過程から公開し、検証を行うべきだ」と反論している。
折も折、9月8日告示の自民党総裁選で、安倍晋三首相が無投票で再選。続いて9月19日未明、安全保障関連法案が参院本会議で、与・野党もみ合いの末、与党などの賛成多数で可決、成立した。
私たち庶民は、再び過去と同じ無惨な戦争に巻き込まれるのでは?と恐れる。あの8月30日(2015年)の「安保法案反対・最大デモ」の報道写真を繰返し見ながら、民意を無視し続ける現政権に苛立つ。
■成人年齢引き下げ―酒・タバコ「18歳から」紛糾
続いて9月20日(2015年)、喫煙、飲酒にかかわる成人年齢をどう線引きするか?について、自民党「成年年齢に関する特命委員会」の議論は紛糾した。提言案には、民法改正で「成人(大人)を、18歳からとする」と改正されたことから、「大人になった18歳が飲酒・喫煙を制限されることは、社会的に保護が必要とはいえ、適当ではない」と指摘し、「世界の主要国は、16〜18歳から飲酒・喫煙を認めている」として、日本でも18歳から認めることが妥当だとした。
これに対し、専門家は反対する。「飲酒・喫煙による医学的な影響を慎重に検討すべきだ」「喫煙者は肺がんなどの割合が高くなる」「“一気飲み”で死亡する学生もいる。なぜ、18歳で解禁するのか」と。
また、学校関係者からは、「喫煙・飲酒は非行の温床になる」との反対意見も殺到した。
誰が聞いても納得できる上記の反対意見が、自民党特命委から出されなかった背景には何があったのか?委員会によると、「健康や教育への影響を調べるべく、専門家から意見を聞くべきだ」との声も出ていたが、「日程が合わなかった」「医師会などからヒアリングすれば、反対されて結論が出ないため、呼ばなかった」「酒類販売業界からの支援も関係しているかも」と弁解。充分な討議が行われないまま、事前に提言案が「公表されてしまった」と、頭をかいている。連立を組む公明党にも慎重論が多く、提言を受け取った安倍首相も「慎重に考えよ」との意向。結果、両論併記にしたとか。
「厚生労働省・2013年の調査」によると、高校3年生の喫煙率は、男子5.6%、女子2.5%。飲酒率は男子16.1%、女子16.6%となっており、厚労省は2020年までに、20歳未満の喫煙率・飲酒率をゼロにすることを目標に掲げている。
“たばこと健康問題”に詳しい、産業医大の大和浩教授は、「現在、世界的に喫煙できる年齢を引き上げる動きが出てきている」と提言。もし、自民党特命委員会の両論併記の提言が認められれば、同じ高校3年生の間でも、18歳の誕生日がくれば喫煙許可、誕生日前の生徒は喫煙禁止となり、「学校での指導は難しく、生徒間も混乱するだろう」 「これまでの学校の禁煙環境を整えてきた努力も無駄になる」と警告している。さて、読者の皆さんは、どう考えますか?