2015. 11月
安倍政権の「安保関連法」公布と「一億総活躍社会」宣言のウソ!
9月17日(2015年)、与党の参院特別委が「安全保障関連法案」の採択を強行、可決。この日、私はたまたま早く帰宅し、テレビの国会中継で、鴻池委員長に詰め寄る野党議員ら、押し返す与党議員ら、二重三重と山盛りになった人垣(写真参照)、目を覆いたくなるような揉みあいと怒号の中で採択された状況を目撃した。
速記録は「議場騒然、聴取不能」と記したが、公表された議事録には(委員長の判断で)「可決すべきものと決定した」との文言が追加された。明らかに「改ざん」だ。にもかかわらず、議事録担当の事務局によると、未定稿で欠落している部分は、後で補って正式の議事録にするのが慣例だとか。
続く9月19日未明、「安全保障関連法」は衆院本会議で成立。こうして、安倍晋三首相は、戦後日本の安全保障政策の一大転換を強行・決定した人物として、歴史にその名を残すことになった。さらに、デモや座り込みで法案に反対してきた何十万人、何百万人の国民に対し、「現時点では、国民の支持は広がっていないが、時が経てば理解は広がっていくだろう」と自信たっぷり。続く9月30日には、自衛隊の海外での後方支援活動を拡大させる同法を公布。公布から半年以内に施行と規定されているから、施行は来年(2016年)の3月末に迫った。
そこで防衛省は、来年3月末の施行までに、自衛隊が武器を使う際の基準などを定めた部隊行動基準の見直しなどを進め、更に、「有事」に最前線で自衛隊員が高度な医療行為を行える「第一線救護隊」の養成※も急いでいるとか。第一線救護とは、銃弾が飛び交う状況下で、戦闘防護をしながらの救助を指す。
安倍政権は「自衛隊のリスクはない」と繰返し強調してきたが、第一線救護隊の養成とは、自衛隊員の死傷を予測してのことではないのか?
そのような危機的状況の中で、突如、安倍首相が打ち出してきたのが、新しい三本の矢「一億総活躍社会」の実現だ。聞き慣れないその中身を見ると、@強い経済、A子育て支援、B社会保障、とある。具体的には、@GDP・国内総生産600兆円(現在のGDPは500兆円だ)。A希望出生率1.8人(現在の出生率は1.42人※※)。B介護離職者ゼロ(現在の年間離職者数10万人だ)。このように、カッコの中の現実と照らしてみればわかるように、今回の「新・三本の矢」は、何の保証もない絵空事に過ぎないのではないか?
実際、GDPはマイナスを続け、個人消費は落ち込み、出生率も、今年の4月から始まった「子ども・子育て支援制度」で保育料が倍増となっては、「女性1人が平均1.8人産んで、少子高齢化社会を改善してほしい」と云われてもNo ! 介護離職者も、家族の介護が必要になると93日間の介護休業がとれるというものの、休暇中の支給額は給与の40%。これでは離職して、介護しながらパートで働くほか、仕方がないのでは?
ここで、Aの子育て支援について更考してみよう。厚生労働省の「人口推計」によれば、出生率1.42人でこのまま進めば、現在1億2,800万人の日本の人口は、2060年には2/3の8,670万人に落ち込むとしている。このままの出生率が続き、65歳以上の高齢者数が40%に達する50年後には、高齢者1人を現役世代1.3人で支えなければならなくなる(現在は2.8人)。だから、1.8人にかさ上げして「人口をなんとか1億人に保ちたい」のが、今回の本音だろう。
菅 義偉官房長官までもが、人気タレントの結婚について「この結婚を機にママさんたちが一緒に“子どもを産みたい”とか、そういう形で国家に貢献してくれたらいいなと思っています。たくさん産んでください」と、口走る始末。過去にも(侵略戦争中)、戦争に送り込む兵士が必要として、「産めよ、増やせよ、国のため」との国策が叫ばれた時代があった。安全保障政策の公布といい、1億人の人口を保持しようとする出生率1.8人の推進といい、「戦争のできる国」への布石と勘ぐりたくもなる「1億総活躍社会」推進の安倍宣言である!
※「しんぶん赤旗」2015.10.4 ※※2014年人口動態統計