2016. 11月
「駆けつけ警護」より「駆けつけ民生支援」を!!
■南スーダンは戦闘の真最中だというのに!
日本から1万キロ以上離れている南スーダン。アフリカ中央部に位置するこの国は、2011年、スーダンから分離独立。同大陸で54番目の新しい国だ。日本の1.7倍の国土には、広大な湿原が広がり、野生動物が大自然の中を群れをなして移動している、自然豊かな国だとか。
ところが実情は、独立後、キール大統領派とマシャル前副大統領派の対立で内戦状態。7月には、大規模な戦闘に発展し、迫撃砲のもと数百人が死亡という惨事が起こっている。最近も10月8日、首都ジュバに近い道路で、民間人を乗せたトラック4台が待ち伏せ攻撃を受け、市民40余人が死傷。2日後の10日には、ジュバと隣国ウガンダの間でバス3台が武装集団に襲われ、複数人が拉致されたという。
そんな最中の10月8日、ジュバの陸上自衛隊宿営地などを視察した稲田朋美防衛大臣は、帰国後の11日、「マシャル氏は国外に逃亡している。キール政府が維持され、機能している状況だ」と、参院予算委員会で答弁している。この偽装答弁を見ても、1年前に安倍政権が強引に可決した「安全保障関連法」の駆けつけ警護を、1日も早く陸自・派遣部隊の任務にしようとする前のめりの政策がみえみえだ……というわけで、ここで「駆けつけ警護」の確認をしよう。
■駆けつけ警護とは?
駆けつけ警護は、海外に派遣されている自衛隊が、部隊のいる場所から離れた場所で危険にさらされているPKO要員や、日本人も含むNGOスタッフのもとに駆けつけて防衛する任務だ。現場に向かう経路に妨害者がいた場合は、銃を構え(上空に向かって)撃つなどの警告をする。ただし、相手の体に命中させる射撃は「正当防衛に限られる」となっている。ところが、これまでの「海外での武器使用禁止」は、今年3月に施行された「安全保障関連法」によって任務とされ、それに伴う武器使用も可能になった。現在、その危うい駆けつけ警護の新任務を、いつ付与するかが、安倍政権の独断に委ねられているのだ。
■「駆けつけ警護」の訓練が公開された!
10月24日、「Go back !(下がれ)」の怒声と共に、「駆けつけ警護」の訓練が、岩手県、陸上自衛隊岩手山演習場で公開された。国連機関の職員2人を建物から助け出すという設定で、周囲には、現地政府に抗議する地元群衆を装った隊員30人がピケを張っている。一方、近々派遣される予定の陸自隊が軽装甲機動車搭乗し、小銃を構え、銃口を群衆に向けている。更に、車の移動と共に、盾を構えた隊員および小銃を持った隊員10余名がにじり寄り、後ずさりする群衆をかきわけて、国連職員を救助するという模擬訓練だ。
この「駆けつけ警護の訓練」は、すでに8月下旬に始まっていたという。訓練では、暴徒が投石、銃撃してくることも想定し、催涙ガスの使用や、正当防衛としての射撃訓練、および負傷した隊員への応急処置の訓練も行っている。
今回の訓練公開ひとつ見ても、昨年成立した「安保法」を、今年7月の参院選までは封印し、参院選の結果、自民一強政権となったとたん、実行に踏み切るというしたたかさに舌を巻く他ない。政府は10月25日の閣議で、“何月何日の時点で「駆けつけ警護」の新任務を付与するか?”について、11月20日ごろの次期部隊派遣までに最終判断するという。危機は迫っている!
■地元住民の性被害を助けない南スーダンのPKO
10月26日には、女性として、「駆けつけ警護」よりも許せない報道があった。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、ジュバで7月に大規模な戦闘が起きた際、現地でPKOを展開している部隊が、性的被害を受けている市民女性を「助けようとしなかった」との報告書を発表した。〈そのT〉現地女性が国連施設前で、政府軍兵士にレイプされているのを目撃しながら、助けようとしなかった。〈そのU〉国連施設近くのホテルを政府軍兵士らが襲い、外国の援助関係者(ODA)を含む複数の女性を集団レイプするのを、助けようともしなかった。〈そのV〉戦闘で、国連の市民保護エリアが攻撃を受けたが、PKOは防衛しようとせず、安全地帯に撤退した、という記事である。
■私たちの願いは―
こういう時こそ、日本の陸上自衛隊は、レイプ現場に駆けつけ支援すべきではないか。いままで私たち日本人は、日本の派遣自衛隊の現地での、インフラ整備や医療活動、戦争孤児の救援などに尽す奉仕活動を、報道で見るにつけ、感動すると共に派遣を肯定してきたのだった。今後とも、「駆けつけ警護」ではなく、地元住民のための「駆けつけ民生支援」に、楫を切りかえて欲しいと思う。