2017. 2月

“きみ死に給うことなかれ”の詩で、13歳の少女厳罰の時代があった

■“君 死に給うことなかれ”の詩で、13歳の少女が厳罰を受けた時代があった!
 1943年のある日、13歳の少女が与謝野晶子が日露戦争時に詠んだ詩『君 死に給うことなかれ』を手にしていたところ、「治安維持法」違反の罪で、特高から殴る蹴るの暴行を受けた―という時代があった。
あゝおとうとよ、君を泣く/君 死にたまうことなかれ/末に生れし君なれば/親のなさけは まさりしも/親は刃をにぎらせて/人を殺せと教えしや/人を殺して死ねよとて/二十四までを そだてしや……(旅順口包圍軍の中に在る弟を歎きて)という、反戦詩である。
 1941年に制定された「治安維持法」は、共産主義者、宗教団体、右翼活動家、自由主義者、政府批判者らが、すべて弾圧・粛清の対象となった法規である。治安維持法の下、1925〜1945年の20年間に約7万人以上が逮捕されたという。なぜこんなことを思い出したかというと、安倍首相が1月5日(2017年)、「犯罪計画を話し合うだけで処罰の対象とする共謀罪の主旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案」を、通常国会に提出―という報道を読んだからだ。

■共謀罪とは?
 共謀罪とは、様々な団体が、「犯罪をしなくても、“計画”するだけで、また、“合意”するだけで処罰する法律」だ。その捜査も、日常的な会話やメールの内容から“合意”と判断することも可能らしい。となると、私たちもウカウカと「○○のために国会前に集まろう!」などのメールを出せば、それが標的になるかも。
 安倍首相は1月26日、このおどろおどろしい「共謀罪」のイメージを払拭すべく、2020年の東京五輪・パラリンピック開催には「テロ対策の強化が必要。法制化はホスト国の責務だ」と主張。菅 義偉官房長官も「(日本は国連の国際組織犯罪防止法に署名しており)テロを含む組織犯罪を防ぐことは、国民も望んでいることだ」と、改正案の主旨を、東京五輪・パラリンピックのためと、はぐらかしている。

■国際組織犯罪防止条約と日本の「共謀罪」の名称変更―
 「国際組織犯罪防止条約」とは、複数の国にまたがる組織犯罪を防ぐため、各国が協調して法の網を国際的に広げる条約で、@重大犯罪の共謀、A犯罪で得た資金の洗浄(マネーロンダリング)の取締を義務づけた条約である。この条約は、国連で2000年11月に採択。12月にイタリア・パレルモで条約署名会議が開かれ、日本も署名。世界187ヵ国が締結国となっている。
 ここに至って、日本政府として改正したのが前述の共謀罪だ。「共謀罪」法案は、2003年以降、小泉政権が国会に3回も提出したが、「共謀の概念が広すぎ、“捜査機関の乱用”の恐れがある」として、野党や世論が反発し、廃案になった経緯がある。そこで、安倍政権が考えたのが、「テロ等組織犯罪準備罪」という名称の変更だったのである。

■「テロ等組織犯罪準備罪」とは?
 この法案を具体的に説明すると、対象者を、テロ組織、暴力団、振り込め詐欺グループなど「組織的犯罪集団」に限定。同時に、追加要件として、「犯罪を実行するための準備行為」を加えた。準備行動とは、@凶器を買う資金の調達、A犯行現場の下見他を挙げている。さらに、対象犯罪を「懲役・禁固4年以上の刑が定められた重大な犯罪」と規定したため、この「犯罪」に該当する数は676にものぼった。
 共産党の小池書記局長は記者会見で、安倍政権による「秘密保護法」「安全法制」他の強行採決によって、警察、自衛隊などが次々と強力な権限を持つようになった現在の状況を説明、「今回の“テロ等組織犯罪準備罪”は、過去の治安維持法の現代版とも言える大悪法だ」と批判している。思春期の13歳の少女が詩集を手にしただけで厳罰を受けた過去の時代を思い出し、「共謀罪=テロ等組織犯罪準備罪」案に、注意深く、反対していきたい。

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