2017. 3月

性犯罪厳罰化
「強姦罪」から「強制性交等罪」へ―女子も男子も被害者に
親などの加害者への「監護者性交等罪」新設


■「強姦罪」法改正進む!
 3月7日(2017年)、1907年の刑法制定以来、今日までの110年間、ほとんど改正が行われてこなかった「性犯罪」を厳罰化する刑法改正案が閣議決定された。女子・女性を被害者とする「強姦罪」を、男子が被害者の場合も同様とし、性交類似行為も適用対象とする。罪名も「強制性交等罪」に変更。法定刑の下限も、懲役3年から5年に上げる、という改正案である。

 また、「レイプ(強姦)」「強制わいせつ」の、(被害者の告訴※がないと起訴できない)「親告罪」規定を外す。これは、絶対に必要なことだ。というのも、私は1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災の直後、現地に飛び、ボランティアとして、避難所の女性たちの“聴き取り”を行ったが、その時、告訴できないさまざまな悩み、悔しさを見聞きしてきた体験があるからだ。

 災害直後の崩れ落ちた瓦礫の中に引っ張り込まれてレイプされた女子学生/半壊の我が家に戻ったところ、潜んでいた男にレイプされた主婦/「銭湯に連れていってあげよう」との男の言葉にだまされ、軽トラックに乗った数人の女性が、これも半壊の倉庫で待機していた男の仲間たちから集団レイプされた事件など、告訴することができず、警察に訴えても「証拠品(加害者の精液の着いた下着など)があるか」と問われて、泣き寝入りしたなども、前述のとおり「親告罪」だったからである。

■「強姦罪」から「強制性交等罪」へ―男子も被害者に!
 男性が加害者、女性が被害者を前提としてきたレイプ(強姦)も、男の加害者による男子(18歳未満)の被害者を認め、性交に類似するわいせつ行為もこれに含めた。罪名は前出の強制性交等罪だ。その実例は、連日のように報道されている。

 2017年2月10日の朝日新聞は、「“男児にわいせつな行為をし、撮影した”などとして、子ども向けキャンプ旅行の元添乗員と小学校教諭ら男6人が、強制わいせつ児童買春・児童ポルノ禁止違反(提供目的製造)の疑いで逮捕・起訴された」と報道。
 元添乗員のグループと教諭のグループは、それぞれ男児の裸や性虐待の動画を撮り、交換していた。6人の所持品から、この種の写真や動画が10万点見つかり、168人分の被害が確認された。うち4〜13歳の男児21人分が刑事事件として立件された、と。
 また、小学校教諭(45)は、ネットで知りあった元・小学校教諭(66)と、熱海市のマンションに11歳の男児を連れ込み、わいせつな行為をしながらスマートフォンで撮影。腕時計型のカメラで、入浴施設での別の男児の裸を撮影するなどもしていた。小学校教師が?と驚くことばかりだ。警視庁によると、昨年上半期に摘発された児童ポルノ事件は1023件。特定できた被害者は781人で、過去最多を記録したという。

■親など「監護者※2」の子どもへの性暴力・性虐待の刑法も新設
 子どもへの性虐待は、家庭内でも日常的に起こっている。「児童虐待対応専門委員」の私のもとに寄せられた相談例は―
 @小学校3年生の男子が、知らない男から「500円あげるからオチンチンに触らせて」といわれた/A小学校4年生の女子、“お父さんっ子”で幼いころからいっしょに入浴してきたが、最近になって父親のなめまわすような視線におびえている/B小学校6年生の担任教師(男性)が、放課後、体格のいい男子をトイレに連れていき、「身だしなみだ」といって、わき毛を剃った/C中学校3年生女子、1年半前から同居の祖父に性虐待を受け続け、母親に言えないまま耐えている、助けてほしい/D高校1年生女子、母親が亡くなった後、父親が変なことを仕掛けてくる。どうしたらいいか?

 今回の法改正案では、こうした家庭内での性虐待などを処罰できるよう、18歳未満の子どもに対し、わいせつ行為や性交を行った親など監護者を罰する「監護者わいせつ罪」「監護者性交等罪」を新設。加害者の暴行や脅迫に対し、被害児が「抵抗できなかった」ため、泣き寝入りしてきたこれまでのケースも、処罰できるようになる。これらの改正法案は3月上旬にも閣議決定する方針だ。

※被害者自身が、犯罪の加害者を、検察や警察に訴えて処罰を求めること。
※2経済的に生活を支える保護者

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