2017. 5月
戦後、排除・失効された「教育勅語」、いま甦る?
■明治天皇発布の「教育勅語」を学校教材にと、閣議決定
学校法人「森友学園」が運営する幼稚園が、園児に「教育勅語」を唱和させていたとの報道の、その“時代錯誤”に「えッ!」と驚く間もなく、2017年3月31日、安倍政権は「(教育勅語を)憲法や教育基本法に反しない形で、教材として用いることは否定しない」との答弁書を閣議決定した。
その直前の3月29日、「日本会議」主導の美しい日本の憲法をつくる国民の会が、東京都内で会議を開催。代表の桜井よし子氏は、「いまの国会は森友学園の話ばかり。何が大事なんですか、あんなこと」と吐き捨て、「1日も早く、ちゃんとした国家のあり方を論じて頂きたい」と主張した。
加えて松野文部科学相は、教育勅語の授業での活用について、「適切な配慮の下であれば問題ない」と発言。稲田朋美防衛相は、「勅語の中にある親孝行、夫婦仲よく、友だちを大切などを学校で教えることで、日本は世界中から尊敬される道義国家を目指すべきだ」と述べる始末だ。かくして、1948年に排除・失効を閣議決定した教育勅語は、70年後、ここに復活したのである。
■1948年、「教育勅語」の排除・失効が閣議決定
教育勅語は敗戦後、「日本国憲法」が公布された1946年に、学校に対し「教育の従来の考え方を絶ち、奉読を禁止せよ」との文部次官の通牒が出され、奉読も一切禁止された。ついで1948年、衆参両院による教育勅語の排除・失効が決議されたが、その理由として「教育勅語の本質は、“天皇が国民に対して、守るべき道徳上の命令を下したところにあり、そうした勅語のあり方が、日本国憲法の「思想および良心の自由」「主権在民」の主旨に反している―と、当時の芦田内閣は、はっきりと、勅語の排除・失効の理由を述べたのだった。
ここで、安倍政権の憲法改正派は、現在の日本国憲法はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の押し付けだと反論するのがおきまりだが……。では、教育勅語のきわどい部分の訳を読んでみよう。
■「教育勅語」を読む
「朕惟フニ……」と新聞に転載された教育勅語を声に出して読み始めた若い父親に対して、3歳の男の子が「ちんって、チンチンのこと?」と、きいたとか(笑)。昔なら不敬罪でしょっぴかれるところだが、文章が難解なので、教材として使う場合のために、問題なところだけ、原文を引用してみよう。「進テ公uヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」「(通訳※)進んで公衆を広め、世務を開き、常に国憲を重んじ、国法に遵い、一旦緩急あれば義勇公に奉じ、以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし」―というわけだ。
■来年度から正式の教科となる「道徳」にぴったりの教育勅語「愛国心」
さて、話は変って、2018年度から、小学校の「道徳」が正式の教科として始まるが(中学校は2019年度から)、指導要領で強調される「愛国心」と教育勅語が密接にリンクするのは明らかだ。教育勅語にある「万一、危機の大事が起こったならば、大儀に基づいて勇気をふるい、一身を奉げて皇室、国家のために尽せ」という洗脳を、幼稚園→小学校→中学校→高校と受け続ければ、かつての日本の侵略戦争(15年戦争)と同じく、お国のために命を捧げる特攻の少年の二の舞になってしまうのではないか?と、日本中の母親たちは心配する。「保育園落ちた、日本死ね!」のツイッターの次は、「教育勅語を教材、日本死ね!」となるかも。
※文部省図書局による通訳