2017. 10月

離婚後の子どもへ 共同親権を!

■離婚のあと、子どもへの「共同親権」を認めない国、日本!
 離婚後の父親と母親が共同で子どもを育てる共同親権制度は、先進国では当たり前―子どもは、離婚した母親または父親のどちらかと暮らし、週末には別居している父親、または母親のもとにお泊りして楽しく過す。ところが日本は、“子どもの健全育成には両親とのかかわりが必要”との認識が薄く、先進国の中で共同親権を認めない唯一の国らしい。
 毎年、約32万組が離婚し、その6割に未成年の子どもがいるというのに、離婚後は単独親権となるため親権争いが絶えず、親権を失った6割以上が、子どもに会いたくても会えないというのが現状だ。
 1989年、国連が採択した「子どもの権利条約」は現在、196ヵ国と地域が批准しているが、日本が批准したのは1994年、158番目の国だった。これひとつ見ても、「子どもの権利条約」を貫く強い主張が、「子どもに最善の利益を!」であるにもかかわらず、“子どもの利益”よりも夫婦間のエゴや憎しみが先行しているように思われてならない。
 この「子どもに最善の利益を!」を、幼い子どもたちにもわかりやすく訳した、日本評論社の『子どもの権利』5条は、「お母さんとお父さんは、子どもを育てる時、同じ責任があります。なかでも大切なことは、子どもにとって一番よいことは何かを、先ず考えることです」となっている。

■絵本『パパとママがりこんしたとき』を出版して―
 私は取材で幾度かスウェーデンに行っているが、ある時、離婚したひとりの父親に偶然出会った。「4歳の男の子が、毎週土曜日に自転車で来ることができる距離に住んでいる。ほんとうは、住みたい地域は別のところなんだけどね」と笑いながら話していたのを思い出す。「6歳と4歳の2人の子どもが、週末には父親のぼくの住むアパートにやってくるので、子ども用の二段ベッドも用意してある」とも。
 このとき、偶然だが、ストックホルムの本屋で、絵本『パパとママがりこんしたとき』をみつけて、翻訳、出版権の交渉を行い、帰国後、自社アーニ出版から発行した。この絵本は、パパとママが離婚することを知って悩む5歳のペトラちゃんと父親の会話から始まる。
 「みんなでいっしょに いようよ。だれも ひっこしちゃだめ」「わかっているよ。パパだって かなしいんだ。でも ママとはもう いっしょにくらせない。だから べつべつにくらそうと、はなしあっているんだよ」「いや。わたしは ぜったい いや!」ペトラはくびをふりました。なんにちかたって、パパは ひとりで ひっこしていきました。
 まいしゅう 土よう日になると パパは、ペトラと(兄の)ユーラスがくるのをまっています。このまえの 土よう日には きのこをとりに、もりへいきました。きのこをたくさんとって、いためて、3人でたべました。

■送られてきた小学校3年生の感想文
 後日、東京・豊島区立B小学校3年生の感想文が、担任の先生から送られてきた。『パパとママがりこんしたとき』なんていう絵本は、子どもたちにとって、決して楽しいとは言えない内容であるにもかかわらず、感想文は小学校3年生とは思えない、感受性豊かな、そして鋭い批判に満ちたものだった。


 私はこの絵本を読んで、どうしてけっこんした時は、あいしあっていたのに、いまになって「もう、あいしていない」なんていえるのか。さいしょから、ちゃんとつきあってからけっこんすればよかったのに、と思いました。私がしょうらいけっこんするんだったら、さいしょから、あいてのことを、なにもかも知ってからにしたいと思いました。


 ぼくのお母さんとお父さんがりこんしたら、どうしようかなぁと思いました。だから、ぜったいに、ふたりがけんかしたり、りこんしたらいやです。お父さんとお母さんが、けんかしないように、ちゃんと、みまもっていこうと思います。この本は、ぼくの心のべんきょうになりました。


■この絵本の読みきかせをした担任の先生の意図は?
 現在、小学校のどのクラスにも、ひとり親家庭の子どもが1人や2人はいる。「その子どもへの思いやりの気持ちを抱けるようにと、この絵本を選び、“読みきかせ”を行いました」と先生の手紙が添えてあった。同じクラスのひとり親の女の子は、こう書いている。「わたしはこの本のように、パパのところに会いに行っています。そのとき、パパがあんまり、わたしをあまやかすもんだから、ママはちょっと困ると言っています」と、明るく綴っている。
 こうした子どもたちの感想文を読むにつけ、子どもの権利条約の「(どんな場合にも)子どもに最善の利益を!」の主張どおり、一刻も早く共同親権制を制定すべきではないだろうか。

 

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