2018. 1月
安倍政権、女性自衛官の倍増を狙う
■女性自衛官は現在14,000人(全自衛官の6%)、これを倍増に!
安倍政権の「女性活躍」政策は大いに歓迎したいが、その中に、女性自衛官の倍増が掲げられているとの報道(「しんぶん赤旗」2017.12.24)に驚く。安倍首相は2016年の自衛隊高級幹部会での訓示で「女性自衛官は、まだまだ足りない」と強調。これを受けて防衛省は2017年4月、「女性自衛官活躍推進イニシアティブ」を策定した。
現在、女性自衛官数は約14,000人と過去最高。だが、自衛官全体(約230,000人)の「6パーセントに過ぎないのは問題だ」「女性自衛官の比率を倍増させる」と発表し、女性自衛官を求める背景として「少子高齢化による若年男子人数の減少」を挙げた。
■現場の最前線に、女性自衛官を!
同時に防衛省は、「女性隊員に、陸自の戦車中隊や偵察隊への配置を解禁する」と発表。この決定で、陸・海・空のすべての職域に女性が起用されることになり、更に現場の最前線にも、武器を携帯して駆けつけることも可能になった。防衛省女性職員活躍推進本部は、「災害派遣、国際協力活動ほか、女性自衛官の更なる活動の推進をはかる!」と、意気揚々だ。
安倍政権が「成果」を誇る南スーダンPKO(国際平和維持活動)の第一次施設部隊(2012年)の女性隊員はゼロだった。が、2015年に安倍政権が強引に可決した「安全保障関連法(戦争法)」施行で派遣された最終部隊、第11次隊(2017年5月帰隊)には、16人の女性隊員が参加していた。紛争がつづく南スーダン・ジュバの自衛隊宿営地の近くで銃撃戦が行われていたというのに……。
■防衛省、PKO部隊・女性隊員の「最優先任務」を公開
防衛省が公開した南スーダンPKO部隊の「教訓要報」によると、@国連PKOが最優先任務に掲げている「住民保護」の中でも、「現地女性への対応は女性隊員にしかできない任務」だ。 A 目につくところで勤務させることで、現地女性のロールモデル(お手本)になる。日本人女性自衛官が広告塔の役割を果たす」と、記述されている。
■2017年から陸・海・空の女性自衛官に「戦闘任務」解禁!
こうして、年々、女性自衛官への戦闘任務が強化され、地球の裏側まで海外派遣が実施されるだろう。現在までに、最も多くの女性自衛官が海外派遣されたのは、「イラク特措法(2003年制定、2009年失効)」に基づく150人だった、とか。
欧米諸国では、女性兵士の比率は10〜15%。現在、世界各地で起こっている紛争現場では、前線と後方の境がなく、市街地でも突然、銃撃戦が始まっている。米軍は、女性兵士が応戦するケースも、隠そうとしない。さらに、EOD(爆発物処理)任務、遺体回収などの任務も避けられず、深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)が、多くの女性兵士の後遺症として公表されている。
■「子どもの貧困」と、女性自衛官への応募を心配する
私が、「児童虐待対応専門委員」に任命されて数年になる。なので、冬休みや夏休みになると、私が仕事の拠点にしているアーニ出版ホールに、児童養護施設に入所中の子どもや思春期の少年少女たちが毎年やってくる。目的は性教育の勉強会だが、苛酷な成育歴の子どもたちにリラックスしてほしいと、自作のゲームを加えたりして、楽しく学んで帰るように心掛けている。
昨年の3月、毎年勉強会にやってくる施設の施設長から、「3月に高校を卒業する○○ちゃんは、積極的に女性自衛官の公募に応募し、合格しました。公務員の資格なので、“安定した職業に就けた”と、施設中が祝福しています」と、メールがきた。
私は、えッ!と絶句。家庭の諸事情などで、児童相談所を経て養護施設に入所してきた子どもは、3歳から18歳まで、ここで養育される(0〜2歳は乳児院)。施設で10数年を無事に過せたのは“幸い”だったが、高校を卒業した後は施設を出なければならない。18歳で経済的に独立して生きていくためには、住み込みの職業に就く子どもたちが多いとのこと。それに比べて自衛官なら、公務員として、生涯、生活は保障されるだろう。しかし、安倍政権の「憲法改正案の9条に自衛隊を追加」などの現状を考えると、小学生の頃から、毎年、私の「勉強会」に来ていた○○ちゃんの姿が浮かび、なんともいえぬ複雑な気持ちになる。今年も、もうすぐ3月の高校卒業期がやってくる。「自衛官の公募に応じないで!」と言いたくても、安倍政権の女性自衛官倍増政策―現実は厳しい!