2018. 3月

セクハラ・性暴力への抗議運動日本では?

Black Boxを読み解く   そのT

■性暴力被害者救済の仕組みを!―伊藤詩織さんが手記・会見
 2017年10月24日、ジャーナリストの伊藤詩織さん(28)が、レイプ被害を訴えた手記の出版を機に、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見を行った。報道によると、スピーチの骨子は「捜査や司法のシステムの改正に加え、社会の意識を変えていくこと。レイプ被害にあった人を救済するシステムの整備が必要だ」となっている。
 伊藤さんは2015年4月3日、就職相談のため、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏と都内で飲食した際、意識を失い望まない性行為をされたとして、警察に告訴。「準強姦容疑」で捜査が行われたが、嫌疑不十分で不起訴処分となった。
 伊藤詩織著「ブラックボックス」の前書きによると、彼女は5月29日(2017年)、司法記者クラブで記者会見を開き、「私が被害を受けたレイプ事件が、検察の判断によって不起訴処分となったため、検察審査会に申し立てた」と報告。だが、検察審査会の決裁は「不起訴相当」。検察の判断に間違いはなかった、という結論に至ったのだった。
 この結論に対し山口氏は、「一連の経過で犯罪行為を認定されたことは一度もなく、今回で、この案件は完全に終結した。一部の報道などで名誉が著しく傷つけられ、法的措置も検討している」とコメントしている。

■米紙が「彼女はレイプに対する日本の沈黙を破った」の見出しで詩織さんの訴えを紹介
 2017年12月29日、米紙ニューヨークタイムズ(電子版)は、元TBS記者の50代男性から性的暴行を受けたと訴えているジャーナリストの伊藤詩織さんを紹介する東京発の特派員電を掲載した。
 記事は「彼女はレイプに対する日本の沈黙を破った」の見出しを掲げ、日本では性的暴行は“避けるテーマ”となっており、女性による被害申告は、僅か4%、などと説明。詩織さんの訴えは、「日本の女性のほとんどがしないことだ」と指摘。記事には、男性も実名と写真付きで登場し、同紙の取材に「性的暴行はなかった」と答えている。そのあとの記事は前述の、就職相談→飲食中に意識を失い→都内のホテルで性的暴行を受ける→東京地裁は不起訴処分→検察審査会は不起訴相当と議決した……と続く。

 山口氏は「民事裁判」時のインタビューに、「被告(山口氏)は原告(伊藤氏)に酒を飲むように強いたことは一切ない。原告は意識もはっきりしており、性交することを十分理解した上で私を受け入れたのである。被告の原告に対する不法行為は、一切存在しない。原告は「性暴力被害者」、または、これに類似する肩書きで活動しているが、原告は被告との関係において「性暴力加害」など一切存在せず、原告が同肩書を使用すること自体が、被告に対する名誉毀損である」と述べている。

■ブラックボックス―その捜査・司法システムに光を当てたい!

 伊藤詩織著「ブラックボックス」の前書きに戻ろう。「検察審査会の判断―不起訴相当の根拠になった事実とは、なんだろうか。担当検事からは、『これは密室の出来事であり“ブラックボックス”だ』と言われた。これまでの月日、私は当事者として、ジャーナリストとして、この“ブラックボックス”に、いかに光を当てるか、そのことに集中してきた」、「しかし、箱を開こうとすればするほど、日本の捜査や司法のシステムの中に、新たなブラックボックスを見つけることになったのだ」と続く。
 さらに、「あの日起きたこと―私自身の体験、相手方の山口敬之氏の言葉、捜査、取材で明らかになった事実については、本書を読んで頂きたい」と。

 私はこの著書を再読すると同時にメモを取り続けた。そして、日本の性犯罪被害者への捜査のあり方、刑法の不徹底さ、更に、あたり前のように行われている職場での“飲み会”、デートレイプドラッグの危険性他について考え、この事件の経緯を詳しく伝えたいと思うようになった。                     ―次号に続く―

 

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