2018. 5月
「旧・優生保護法」の下、16,500人(うち男性3割)が
強制不妊手術を施行された!―その実態を探る― そのT「Black Box」を読み解く―は小休止して、緊急な性的時事問題に変更しました。
■旧・優生保護法により強制不妊手術を受けた女性が提訴!
優生保護法とは、不良な子孫の出生防止を目的に、優生学的断種手術および人工妊娠中絶を合法とした法律で、1946年9月11日施行、1996年12月に「母体保護法」と改正するまで約50年間続いた。
2018年1月30日、かつての優生保護法の下、「不妊手術を強制され救済策も取られていない」として、宮城県在住の60代の女性が、仙台地方裁判所に訴訟を起こした。彼女は15歳の時に“知的障害を持つ者”として強制不妊手術を施行された。
記者会見で原告側は、「出産の機会を奪われ、人権を侵害された。国の謝罪と補償を求める」と訴えた。重ねて、新里宏二弁護団長は「子どもを産むことは憲法で保障されている基本的人権だ。手術の強制は重大な人権侵害であり、救済は当然であるのに、今日まで放置してきた国の不作為を問いたい」と語った。
これに対し厚生労働省は、「訴状が届いておらず、コメントは差し控えたい」。一方、国側は、旧・優生保護法が母体保護法に改訂されてから20年以上経っており、損害賠償請求権がなくなる「除訴期間※」を理由に、棄却を求める構えのようだ。
■「旧・優生保護法」の主要な条文を読む―
第一条 この法律は優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。
第二条 この法律で優生手術とは、生殖腺を除去することなしに生殖を不能にする手術で、命令をもつて定めるものをいう。
2 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が母体外において生命を保続することのできない時期に、人工的に胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。
第三条 1 本人若しくは配偶者が遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患若しくは遺伝性奇形を有し、又は配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有しているもの。
2 本人又は配偶者の四親等以内の血族関係にある者が、遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性畸形を有しているもの。
3 本人又は配偶者が、癩疾患に罹り、且つ子孫にこれが伝染する虞れのあるもの。
こうして改めて読んでみると、この法律による強制不妊手術施行の対象者(第三条)が、@「本人若しくは配偶者が……」に始まって、A「本人又は配偶者の四親等以内の血縁関係者が……」と拡大され、Bに至っては「癩疾患に罹り、且つ子孫にこれが伝染する虞れのあるもの……」となっていることに驚かされる。
■強制不妊手術までの流れ―
強制不妊手術は、まず医師が「優生保護法」第三条にあたる者かどうかを診断し、保護者の同意※※を得た上で、都道府県の審査会に申請。審査会が手術の適否を決定した者に限り、医師が手術を実施する―となっている。
しかし実際には、知的障害や精神疾患などがある人に対し、本人の同意がなくても、医師が必要と判断すれば優生保護審査会の審査を経て「不妊手術の実施」が認められていたのだ。
では、どんなことが行われていたのか、「実例」を挙げてみよう。(次号へ続く)
※ 不法行為があった時点から20年が過ぎると、損害賠償請求権が消滅する民法の規定。※※ 優生保護法 第12条