2018. 7月
「旧・優生保護法」の下、16,500人(うち男性3割)が
強制不妊手術を施行された!―その実態を探る― そのV
■被害者続々、訴訟を公表―
この「旧・優生保護法の違憲性を問う」裁判の第1回口頭弁論※(2018年3月28日)」をきっかけに、「不妊手術を強制された」として、北海道の70代男性が、国に賠償を求め札幌地裁に提訴する方向で調整していると公表。ついで、東京都に住む70代男性が、同じく不妊手術を強制されたとして、東京地裁に提訴する意向を固めたことが判明した。
3月30日(2018年)、この問題で北海道、宮城、東京、愛知、大阪、福岡など17都道府県の弁護士が全国一斉に「電話相談」を受けつけた。1日で34件の相談が寄せられ、拡大の一途を辿る模様だ。
■強制不妊手術、新たに資料発見!―なお7割不明
こうして旧・優生保護法(1948〜96年)のもと、強制不妊手術を施行された全国にわたる被害者の判明数は4,773人となった。だが、厚労省が全国の記録文書でまとめた1万6,475人の3割にしか達しておらず、7割はなお不明だ。すでに他界されたか、無言のうちに耐えているのか?
2018年5月27日、被害者救済を求める弁護士184人による「全国弁護士団」が結成され、都内で結成大会が開かれた。共同代表の新里宏二弁護士は、「長い間、被害者を放置してきた国に早期の謝罪と補償を求める。1人でも多くの被害者を救済したい」と述べた。
精神科医の岡田靖雄さん(87)は、「30代の女性患者への強制不妊手術を申請し、手術にも立ち会った」と告白。「当時、優生保護法について議論することはなかったが、かかわった以上は精神科医も責任を負うべきだ」、「国は厳密に実態を調査し、手術を強いられた人びとに償うべき」と断言した。こうした“人権事案”に対し、国は、どう応じたか?
■国は「救済法、作る義務なし!」と主張―
国は2018年3月28日の第1回口頭弁論で、「当時、優生保護法は合法だった」として、請求棄却を求め、原告と争う姿勢を示したが、具体的な主張は持ち越していた。
6月13日、第2回口頭弁論が仙台地裁で開かれたが、国は、旧・優生保護法が違憲かどうかの見解を示さず、「救済法を作る義務はなかった」「手術の被害を金銭的に回復する制度として、国家賠償法が存在していた」「国家賠償法と別に、“救済法”を作るかどうかは、国会議員の裁量にゆだねられ、法的義務はない」と突っぱねた。これに対し、原告側の新里宏二弁護団長は、「当時は“合法”だったとして、謝罪も補償もしなかったのに、今度は“国家賠償法があった”という二枚舌には驚く。憲法違反があったかどうか、国は認否を示して欲しい」と迫った。
仙台地裁の中島基至裁判長は、「社会的な影響を考えると、裁判所は、合憲、違憲の判断を明示する」と述べ、国に7月末までに認否を示すよう求めた。提訴から4ヵ月半―国は、またもや逃げた!今後どうなるか?厳しく見守りたい。※ 強制不妊手術を施行された宮城県在住の女性(60代)の口頭弁論