2018. 8月
世界に拡がるセクハラ被害告発の「#Me Too(私も)」が、
日本ではなぜ「We Too(私たちも)」「With You(あなたと共に)」
なのか?
■5月9日(2018年)、財務省が「セクハラ研修会」開催
5月の連休に、友人が小学校2年生(7歳)の男の子を連れてやってきた。「いま、クラスでどんなことが話題になってる?」と聞くと、「セクハラ!」と即答。続いて、「むね、さわらせて」「いっしょに、ねよう」ときた。更に、左右の手のひらを三角形にして、「先生の胸、触ったら、こんなにでかかった!」と大得意。「そんなこと言ったり、したりしていいのかなぁ」と私がぼやくと、「だって、政府のえらい人が言ったんでしょ!」ときた。この子の将来の夢は“ジャーナリスト”だそうだ。
同じ頃の5月9日、財務省は、福田淳一・前事務次官が(上記のような)セクハラ問題で辞任したことを受け、この子の言うえらい人―財務省幹部ら80人を対象に「セクハラ研修」が開かれた。その議題が「なにがハラスメントなのか?ハラスメントが起きた場合、どう対応すればいいのか?」だったというから、人権意識皆無のえらい人集団には、開いた口がふさがらない。
■4月24日、麻生太郎財務相の「はめられた」発言!
麻生財務大臣は、福田氏が辞任した4月24日、「(女性記者に)はめられて訴えられているんじゃないか、そういう可能性は否定できない」と、財務省金融委員会で述べ、野党から撤回を求められると、「発言を撤回させていただく」と謝罪したにもかかわらず、5月4日の記者会見では「セクハラ罪という罪はないですよね。殺人罪とか強制わいせつ罪とは違いますから」と放言。この放言をめぐり、政府は5月18日、「現行法令において、“セクハラ罪”という罪は存在しない」とする旨を決定。答弁書には「セクシュアルハラスメントに該当し得る行為には多様なものがあり、これらの行為をセクシュアルハラスメントとして処罰する旨を規定した刑罰法令は存在しない」とあった、とか。
■国際労働機関(ILO)、職場での暴力・セクハラ禁止条約採択
6月8日、スイスのジュネーブで開かれていた国際労働機関総会は、職場での暴力やセクハラを禁止する条約を求めた“職場での暴力とハラスメント基準制定委員会”の報告を採択。さらに予防策、被害者救済、意識の啓発などに取り組むことを、加盟各国(187ヵ国)に求めた。これに対し、欧州連合(EU)の代表は、「EUの普遍的人権、尊厳、自由、平等、連帯と共通している」と、支持を表明。ところが日本政府は、「(地球上の)すべての国が同意できる柔軟な内容にすべきだ」として、一般的な原則のみを定める「枠組み条約」にとどめるよう提案したというのだから、人権意識欠如の国という他はない。
■“#Me Too”運動、発端の人物ワインスタイン、逮捕される
折も折、世界中に拡がっている「#Me Too(私も)運動」発端の人物、米国ハリウッドの著名プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン容疑者(66)が5月25日、ニューヨーク市警に、レイプ、犯罪的性行為、性的虐待の疑いで逮捕された。「#Me Too運動」はそれを受けて、更に勢いを増している。
しかし日本では、“#Me Too”は一向にに広まらない。著書『ブラック・ボックス』で、自身が受けた性暴力被害を告発したジャーナリストの伊藤詩織さんは、ニューヨークで開かれた“ヒューマンライツ・ナウ”の討論会の席上、「日本は性暴力被害者が声をあげるとバッシングを受ける“#Me Too”と言いにくい社会だ。なので、『#We Too(私たちも)』と呼びかけている」と語った。また、弁護士・ジャーナリスト・人権活動家ら200人が、国会内で開いた“被害者を孤立させない環境を考える集会”は、被害者を孤立させてはいけないと、「#With You(あなたと共に)」を掲げた。日本には、「Me Too」 と叫ぶことに果敢に立ち向かえない何かがあるのではないか?と憶測するのは、私だけではあるまい。