2018. 9月

米国 トランプ大統領の
「Global Gag Rule(口封じの世界ルール)」再導入令に、
世界中の女性が立ち上がった! そのT

 

 2017年1月23日、トランプ大統領(共和党)は、就任直後の本格的な執務第1日目に、「メキシコシティ政策」再導入の大統領令に署名した。
 メキシコシティ政策とは、1984年、メキシコシティで開催された国連主催第2回「国際人口会議」の席上、当時のロナルド・レーガン大統領(共和党)が行った宣言だ。その宣言とは、世界中の各国および地域が行っている「健康に関する支援活動」の中でも、特に、人工妊娠中絶に関する情報・教育・カウンセリング・中絶の実施・術後のケア、中絶合法化のロビィング活動を実施している非政府組織(NGO)に対し、米国連邦の助成金(当時 約5億7500万ドル)を用いることを禁ずる、というものだ―アメリカ合衆国・国際開発庁は、国際家族計画連盟(IPPF)をはじめ各国の加盟協会他への助成金を提供する世界最大級の組織である。

 ここで、グローバル・ギャグ・ルール」の俗称が、なぜ「口封じの世界ルール」なのか、説明しておこう。gagを辞書で引くと猿ぐつわ(猿が声を出さないように、口にくつわをかけること)とある。つまり、人工妊娠中絶に関する情報も教育もカウンセリングも、ましてや中絶が法的に禁止されている国※における、合法化を目指す女性たちの活動(ロビィング)に、くつわをかける―これが「口封じの世界ルール」と呼ばれる所以である。

■共和党大統領 対 民主党大統領により、繰返される助成金禁止と復活
 ところで、この世界最大級の助成金の大統領令による「禁止」と「復活」は、下図のように、共和党の大統領は禁止令を出し、民主党の大統領になると禁止を撤廃して助成金を出すという闘争になっている。


 次に、図の復活・撤廃の上に「プロ・ライフ派」「プロ・チョイス派」とあるのに注目!「プロ・ライフ派」とは、宗教右派団体を中心とした“人間の生命は受胎の瞬間から存在する、中絶は殺人”という胎児の生命・権利の尊重派。「プロ・チョイス派」とは、1970年代に始まった全米女性機構(NOW)などのフェミニズム運動を基盤とした、“女性の自己決定権としての中絶容認派”だ。

 つまり、プロ・ライフ派の民衆の支持の許に、あるいはプロ・チョイス派の民衆の支持の許に「大統領選」を闘えば当選する―いわば「中絶反対派」対「中絶容認派」という、女性の健康と権利の選択権を、政治に利用していると言っても過言ではない。しかも、同じ助成金禁止でも、トランプ大統領の禁止令は、1984年にメキシコシティでレーガン大統領が禁止の対象にした家族計画および人口妊娠中絶に関する支援禁止にとどまらず、その対象を母子保健、HIV/AIDS、感染症、結核、マラリア、熱帯病他への保健支援にまで拡大。カットされる助成金は、巨額の総額95億米ドル(日本円にして約9.500億円)にのぼる禁止令である。

■オランダ政府、「国際的中絶基金」設立を発表!
 トランプ大統領の助成金禁止令の動きを受け、オランダ政府は、これに対抗すべく、即、国際的中絶基金“She Decides”(決めるのは彼女自身)の設立を発表。拠出金1,000万ユーロを約束した。
 ついで2017年3月2日、オランダ、ベルギー、スウェーデン、デンマーク政府共同主催、日本を含む50カ国以上が参加する国際会議をブリュッセルで開催。
 この会議で合意した国々の拠出金および世界中のドナーによる寄付金2億2,300万ユーロを基金として、国連、国際会議、NGOに分配される―と発表。ついでカナダ政府は、3月8日の「国際女性デー」に「リプロダクティブヘルス/ライツ」のNGO機関に対し追加金6億5,000万ドルの支援を表明。日本政府(外務省)も3月28日(米政府への明言を避けながら)、国連人口基金(UNFPA)と国際家族計画連盟(IPPF)への拠出、約2,800万ドルを発表した。
 しかし、これらの世界各国の拠出金は、米国が打ち切った助成金95億米ドルの足許にも及ばない。世界中の女性たちは、一斉に立ち上がった!

※ 人工妊娠中絶を全面的に禁止している国:チリ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、バチカン、マルタ、ニカラグア

 

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