2019年2月
世界で起っている性暴力・性奴隷制!「私を最後にするために!」とナディア・ムラド そのU
■過激派組織「イスラム国IS」の戦闘員らがヤズディ信徒の女たちを性奴隷にする理由
拉致した女性たちを、どの戦闘員に褒美として無償で与えるか、どの戦闘員には金を出して買わせるかは、イスラムの法に則した明解な文書にあり、誰もが読めるようにパンフレットに詳しく記述してあるとか。故に彼らは、当然の権利として、ナディアたちを売り買いするのだ。
性奴隷市場は夜に開かれた。ナディアたちが収監された大広間の階下からは、夜になるとISの戦闘員らが、“売買する女たち”を登録したり、値段をつけたりする騒がしい声が聞こえてきた。
最初の男が大広間に入ってきた時、ナディアたちは一勢に「市場に引っぱり出さないで!」と叫び、懇願した。男らは、叫ぶ女たちの髪をつかみ、顔を上げさせては胸や脚を撫でまわし、物色を始めた。
■ナディアを最初に性奴隷にした男は―
ナディアの前に現れたのは、赤味がかった顎ひげの大男だった。「立て!」と大男は怒鳴った。ナディアは学友だったカスリーン、ロジアン、ニスリーンとしっかり抱き合いながら、「私があなたのところに行きます!でも、この三人と一緒に!」と叫んだ。そこへ、監視員ナファがやってきた。「またお前か!」と怒鳴ると、4人の頬に往復ビンタをくらわせ、しっかり握りあっていた手を鞭で叩き割って孤立させた。そして、戦闘員らが一人ひとりの手を引っぱり、連れ去った。
ナディアは、サンダルを履いた痩せた男の足許に身を投げ出して言った。「お願い、私を連れていって下さい。あの大男の許には行かせないで……」。すると、その男ハッジ・サルマーン(以下 ハッジ)は、大男に向かって言った。「彼女は私のものだ」。こうして、ナディアはハッジの性奴隷となった。
ハッジは、シャワーを浴びた後、寝室のドアを閉め、ナディアの隣に坐った。「おまえは4人目のサービアだ。前の3人はムスリム※1になった。ヤズディ教は不信心者だ。だから我々は、おまえらを助けるために、こうしているんだ」と言い、服を脱ぐよう命じた。「いま、生理中なんです」と、ナディアは拒んだ。「では、証明してもらおう」と彼は言った。ナディアは服を脱いだ。月経中の性交は、イスラムの法で禁止されているため、ハッジは一晩中、体のあちこちを触るだけで終った。
翌朝、目を覚ますと、彼は言った。「シャワーを浴びてきなさい。今日は我々の大事な1日になる」。そしてナディアに黒いアバヤとニカブ※2を手渡した。それを身につけた彼女は車に乗せられ、モースルの裁判所の前で降ろされた。
■裁判所で性奴隷証明書を受け、顔写真を撮られる!
建物に入ると、大勢の判事や廷吏の前に行列ができていた。ここで、どのヤズディ教徒の女性が、どの戦闘員の所有になったかを、公式に認める書類が作成される。こうして性奴隷たちは、ここに連れてきた男の所有物であることを判事によって証明される。戦闘員たちは、これを結婚と呼び、レイプは公然と許可されるのだ。続いて判事は、「ニカブを上げなさい」と言い、ニカブを上げて顔をみせたナディアの顔写真を撮った。
裁判所を出たあと、彼女はハッジにきいた。「あの写真は、身分証に使うんですか?」「いや、おまえが誰といるかを追求するのに使う。もし逃げ出したら、この顔写真につけた俺の名前と連絡先が、何百枚もコピーされ、各地の検問所に吊るされるから、おまえは必ず、俺のもとに連れ戻される」と、せせら笑った。その夜から、ハッジによるレイプは続いた。
■来客3人がレイプ目的でやってくる!
ある日、「客が来たのでお茶を出すように」と言われたナディアは、仕方なく彼に与えられた肌が露出したワンピースを着て、1階の客間にお茶を運んだ。3人の客は戦闘員だった。ナディアが2階の寝室に戻ったとたん、3人の戦闘員と見張り役の男が入ってきた。その男たちを見た瞬間、ナディアは自分に与えられる罰が何なのかを理解した。ハッジは、ナディアを彼らに売ったのだ!男らは次々と彼女を押し倒し、レイプした。
こうして、ナディアは戦闘員の間で売却され、または贈与され、遂には検問所の職員ら多数のレイプ対象物とされた。拉致されてから3ヵ月たったある日、ドアの鍵をかけ忘れた男の家から、逃亡できそうな一瞬が訪れる!
(次号に続く)
※1「(神に)帰依する者」という意味のアラビア語で、イスラム教の教徒のこと。
※2 ニカブとは、口や鼻を含めて全身を覆うベール。アバヤとは、ニカブの下に着る黒いロングワンピース。