2019年10月
同性婚をめぐる世界の動き その2
■世界の同性愛の法律
世界の76ヵ国では、同性同士が合意の上でカップルになるなどの関係をもつことは違法とされている。このような国では、LGBTの人びとは逮捕され、裁判にかけられ、投獄される危険にさらされている。
国連・人権機関は1990年代から、繰り返し懸念を表明してきた。2011年、人権理事会は性的指向/性自認を理由にした暴力・差別について「重大な懸念」を表明した決議を採択。
2011年6月、人権理事会は、国連として初めての「人権・性的指向・性別自認に関する決議17/19」を採択し、雇用、医療、教育における差別、法律による不当な処罰、暴行、殺害に到るまで、組織的な暴力が世界の到る処で起こっている報告書を発表した。
報告書には“レズビアンの女性は、任務をおびた男性が強姦することで治る”とか、ゲイの男性はアナルセックスの証拠として、肛門の強制検査を行う地域があるなど、人権侵害をものともしない実情が書きつらねてあった。
■LGBTからSOGIへ
国連人権委員会は、2011年、「LGBTからSOGIへ」との指示を出した。SOGIとは、Sexual Orientation / Gender Identityの略。日本語では性的指向/性自認と訳されている。ここ数年、一般に広まったLGBTの用語は、レズビアン、ゲイなど、個人のカテゴリーを表す語であるのに対し、SO(性的指向)とGI(性自認)は、すべての人が持つ属性である。
どういう性を性愛の対象とするかを性的指向、自分をどういう性別と認識するかを性自認という。つまり、異性を性愛の対象とする一般の人びとの「性的指向」、自分を「異性愛者」と性自認するのも含めてSOGIなのである。要するに、性的指向が同性に向くか異性に向くか、自分は同性愛者か異性愛者かとの認識―すべての人を含むのがSOGIなのである。
現在、国際社会の特に法制度、政策を語るには、SOGIの概念を使うこととなっており、広く一般にも使われている。SOGIなら一般の人びとの性的指向/性自認は異性愛者であるだけで、LGBT性的少数者だからといって差別することなく、みんないろいろなんだと、包括的に自分の性的指向/性自認を認めることが広まっていくに違いない。
とはいえ、「性を語る会」主催の第109回シンポジウム(2016年1月16日)で、「LGBTは13人に1人、あなたの傍にいます」という発言があり、LGBTの思春期における自殺願望は6倍といわれることから、「これは自殺ではなく社会的他殺だ」と、当事者からの発言が、会場がショックに揺れたことを思い出す。現実は理想より程遠いのかもしれない。