第10回
私と性教育─なぜ?に答える |
オギャーオギャー、「おめでとうございます」 みんなも、こうして生まれてきたんですよ。 |
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2004.12 性を語る会代表 北沢杏子 |
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性教育バッシング、ジェンダーフリー・バッシング他、現在私たちの周囲にひたひたと押し寄せるバックラッシュの(東京における)現況を、日を追って報告します。 昨2003年12月26日、東京都教育庁指導部は「学校における性教育で使用する教材等に関する調査」と称する調査票を区市町村教育委員会指導課に送付しました。それは下記のようなものです。 1.貴校の性教育教材等の実態について、該当するものに○印をつけよ。 (2)性交や出産シーン等が示されているビデオ等の視聴 覚教材。 (3)性器のついた人形などを保有しているか、していないか。 (4)その他、学習指導要領及び発達段階を踏まえていない、 不適切と判断される教具を保有しているか、していないか。 この調査票には学校名と記入者の職・氏名を記入しなければならないとなっており、所有している教員は戦々恐々、結果的に、心ならずも性教育の自主規制へと転じています。 2004年4月、小学校の教科書検定によって、W保健”のエイズのページは『HIVは感染している人の血液や精液、ちつで出される液などが、ねんまくやきず口から入ることでうつります』が、『HIVは、感染している人の血液などが、きず口などから入ることでうつります』と修正されました。 調査票と同じく、HIVが感染する性器、性交が削除されています。これでは、正確な感染経路が教えられません。 8月12日、東京都教育委員会は、「ジェンダーフリー」の用語を教育現場から排除することを決めます。理由は「意味や内容が使用する人によってさまざまで、誤解や混乱が生じている」からだそう。 更に、学校での「男女の性差を否定するような思想に基づいた男女混合名簿」の作成も禁止する方針を発表。東京都下の小学校の81%、中学校の42%、全日制高校の83%がやっと導入に漕ぎつけた男女平等名簿も危機に瀕しているというのが現状です。 続いて11月8日、都が設置した有識者会議「青少年の性行動について考える委員会」は、中学生以下の性交渉を禁ずる「都青少年健全育成条例」改正(悪)を提出しました。その上で同会は、「東京都と長野県を除く道府県では、青少年健全育成条例で18歳未満を相手とする性交渉が禁じられ、このうち、福井、静岡、岡山、広島、長崎の5県では青少年への処罰規定がある」と指摘。 「性行動の低年齢化、10代の人工妊娠中絶・性感染症増加」を防ぐために必要な改正だとしています。 ついでながら、3日後の11月13日には、都教育委員会が受講を命じた「再発防止研修」への命令取り消し──を求めた教員らが敗訴しています。 この裁判は今春の卒業式や入学式で君が代斉唱時に起立しなかった教員らが「再発防止研修」の受講命令に対し、「思想信条の自由を奪うものだ」として提訴したものでした。 憲法9条改正(悪)へと、ひたすら暴走する私たちの国。 このバックラッシュの今後の行方を、油断なく追跡し、伝えていかなければと考えています。 |
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