北沢杏子のWeb連載
第104回 私と性教育――なぜ?に答える 2012年10月 |
HIV/エイズに関する4つの最新情報
最近私が得たHIV/エイズの4つの最新情報をお届けします。これを資料に大いに討論し、お互いに知識を広めていきましょう。
@HIV感染者/AIDS患者の年齢の割合(2011年)
HIV感染者
20歳未満:2%
20歳代:30%
30歳代:36%
40歳代:19%
50歳代:10%
60歳以上:3%
AIDS患者
20歳未満:10%
20歳代:10%
30歳代:31%
40歳代:36%
50歳代:18%
60歳以上:5%
● 感染者に20歳未満、20歳代の若者が少なくないのは、感染予防の知識が行き渡っていないためと思われます。学校教育にも問題ありです。
● 50歳代、60歳以上の方々は、健康維持に十分気をつけてください。デンマークの調査では、25歳で感染した人の平均余命は、1996年以前は7.6年だったのが、2000年以降は(次々に新しい治療薬、治療法の効果で)38.9年と延びたそうです。
A感染経路の報告件数(2002〜2011年)● 日本では1985年のサーベイランス開始以来、年間の新規エイズ発症者数が増え続けています。特に、男性の同性間性的接触(MSM)における発症者の増加が著しい。
こうした背景に基づき、2006年、厚生労働科学研究所は「5年間で対象層における検査を2倍に増やし、エイズ発症者を25%減らす戦略研究」補助金事業を展開しました。
BHIV検査を受ける人が減少● 検査を受けに来る人は、2008年をピークに減少しています。
● 電話相談も2009年に比べ、翌2010年は10%減、11年はさらに5%減少し、過去10年のうち最も少ない結果となりました。
● 東京医科大学病院の医療ソーシャルワーカー藤平輝明さんは「最近は、新しい治療薬・治療法の進化に伴い、“死なない病気”と楽観して検査を受けず、発症して初めて病院に来る人も少なくない。発症してからの治療は効果が限られる。検査で早く感染に気づくことが重要」と力説しています。
C感染後の進行の早い人が増えている!● 体を外敵(各種ウィルス、細菌、カビなど)から守る白血球の「CD4陽性リンパ球」は、健康な人の場合、血液1マイクロリットル中約1000個(700〜1300)ありますが、HIV感染後は徐々に減って、200まで減少すると発症するとされ、この数値を参考に、「治療をいつ始めるか」を決めてきたのでした。
● 2002年までは、CD4が「200未満」になったら治療開始だったのが、08年には「350未満」、11年には「500未満」に引き上げられました。というのも、近年、感染後の進行が早い人が増えてきたためです。
● 国立国際医療センターの岡慎一エイズ治療・研究開発センター長らの報告によると、1997〜2007年に受診した感染者82人の半数が、感染半年(6ヵ月)後に、CD4が350未満にまで免疫力が低下していたことが判明したとのことです。
● さらに、1985年以前に感染した集団では、3年後の検査でCD4が350より高かった人が48%いたのに、1997〜2000年の検査では、14%に減っていた。そして今回の発表は、3年後ではなく、半年(6ヵ月)後という短期間に50%もの人が、「350未満」に減少という早い進行を示していたのです。
それはなぜか?岡先生によると、HIVの異変で、日本人の白血球型では、ウィルスを攻撃できない可能性が高いのでは?ということです。
新しい発症抑制薬や新しい治療法で安心していてはいけない!HIVはそれに対して、どんどん変異していくのですから。