北沢杏子のWeb連載

109回 私と性教育――なぜ?に答える 2013年3月

 

送られてきた小学校の先生からの報告文 子どもと話そう 性のこと 愛のこと

 昨年(2012年)の夏休みの終わり近く、2日続けて、小学校2校の先生方が、私が仕事の拠点としているアーニホールでの夏期講習にきてくださいました。1日目は埼玉県深谷市の市立小学校の養護教諭の方々、2日目は、全国私立小学校の保健体育の先生たちでした。そのときのお一人、K・T先生の報告文が最近、冊子として送られてきたので、ここに転載させて頂こうと思います。

■北沢杏子さんの夏期研修
 2012年8月21日。東京都世田谷区用賀。最寄り駅は、東急田園都市線の桜新町で、サザエさんでお馴染みの長谷川町子美術館で有名な町です。駅前から歩いて程なくの閑静な住宅地の中に、目指すアーニ出版がありました。
 約束の時間に余裕をもって到着し、入り口でホッとしている私たちに、元気な声で「早かったですね。北沢杏子です」と優しく声をかけてくれたのが、今回お世話になった北沢杏子先生です。
 先生は、1987年設立の「性を語る会」の代表として性教育を中心とした活動を行なっています。全国の幼稚園、小学校、中学校、高校、大学生までを対象としている性教育の実践や教師対象の講演、世界各地の性教育、女性問題、少年非行などの取材を重ねながら、各雑誌や新聞などにおいて旺盛な教育活動を展開しています。著書も多数あり、制作に携わったビデオにおいても多くの賞を受賞され、ご存知の方も多いと思います。

■性教育について
@「私はどうして生まれたの?」と子どもから聞かれたら?
 北沢先生は、親に対して、家庭における性教育の大切さを語りかけています。生命の誕生がすばらしいこと、新しい輝く命はパパやママが育んだものであること、命は尊いものであることなど、この世に生まれてよかったと思えるように伝えることが大切です、と熱く語ります。

A子どもへの性教育の実践例
 男女の体の絵にそれぞれのパーツを貼っていくことで、その仕組みの違いに気づかせたり、卵子の大きさを黒い紙に針の先であけた穴の大きさで確かめたりして、わかりやすく工夫しています。特に体の水着をつけている下の部分(乳房、性器、肛門など)は、プライベートゾーンであり、自分の、また相手の意思に反して、見たり見せられたり、触ったり触らせたりしてはいけないところ、それは相手の人権侵害であるということを、幼い頃から教える。つまり「性教育は人権教育である」と強調されました(写真参照)。

 特に「子宮体験袋」というキルティングで作った、長さ3m、幅90cmの筒状の袋を使った授業は感動です。看護師さん役の先生が持つ子宮を型どった裾の方から、子どもたちが1人ずつ潜り込んで、助産師さん役が待つ腟口の方へ、どんどん這って進みます。産道の出口近くまで来ると、赤ちゃん役の子は「お母さん、ぼく生まれるよ。いいかい、生まれるよ」と叫んで、顔を出したとたん「お誕生おめでとう」とみんなが拍手します。
 これは、子どもに「自分の意思で生まれてきたんだ」という自己肯定感を持たせるためのよい体験になるそうです。

B保健における性教育
 「小学校の性教育が難しい」という私たちの質問についても、自由な討議がなされました。学校の保健の教科書では「性交」は禁句です。排卵、月経、精子の産生と射精は教えても、受精は蛙などの放出した卵に精子をかけている写真での説明のみで、受精の仕組みとしての「性交」は一切ふれてはいけないのです。ですから、正しく教えられるのはお家の人(お母さんやお父さん)ということになります。しかし、親から子どもへ説明することは難しい。で、それを補うために様々な絵本を紹介していただきました。

C北沢先生から学んで―
 先生の言葉で印象的だったのは、反抗期の小学校高学年向けの授業で「大いに反抗なさい。社会に出てからの反抗はトラブルのもと。今はトレーニング中と考えればいい。ただし『クソババア』なんて怒鳴らないで『こういう理由でお母さんの言うことが納得できない』『お母さんも怒鳴り返さないで、お互いよく話し合おう』と言ってごらん」というのだそうです。親子間の会話の仕方やコミュニケーションの大切さを改めて感じさせられた1日でした。


 こうした感想文、報告文を送っていただくと、私の講座のどこが印象に残ったのか、指導の中にどう活用しようとなさっているかがわかり、今後の私の講座の参考にもなります。みなさんも、性教育教材が壁一面に飾られたアーニホールにどうぞ!お持ちしています。


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