第11回
私と性教育─なぜ?に答える |
|
|||
2005.1 性を語る会代表 北沢杏子 |
||||
JICA(国際協力機構)の北海道・帯広国際センターの招聘による保健婦、栄養士さんたち9人が(わたしが共同代表を務める)アーニ出版のホールに研修にやってきました。 スワジランド、マラウイ、タンザニア、ケニア、ザンビア、ガーナからのみなさんです。当ホールには南米、東南アジア、アフリカ他各国の研修生が勉強にきますが、いつも夏のこと。今回のように冬にきたのは初めてで、「ニッポン寒いねー」と色とりどりの美しい民族衣裳の上に黒やグレイの防寒服を着こんでいます。 さて、研修時間4時間の1,2時間目は、私による「エイズの紙芝居(アフリカ太鼓の演奏つき)」に始まり、研修生の手人形を使ってのエイズの人形劇の実習。そして「コンドームの正しいつけ方10ヵ条」も、私の指導どおりに積極的に実演しました。 『世界人口白書』によると、HIV/エイズの感染者/発症者数は年間500万人。なかでも10代、20代の若者の感染は1日に6,000人。14秒に1人が感染または発症しているとか。とくに患者/感染者が集中している南アフリカからきた研修生たちですから、「自国に帰ってどう指導するか」、質問にも熱が入ります。 3時間目は全員が輪になって、各国の実情報告。スワジランドのクローリーさんが、「(両親をエイズで亡くした)エイズ孤児が激増。授業料免除などの対策を講じているが追いつかない。食べるものにも事欠く有様で、コミュニティのリーダーが農場主に頼みこんで孤児たちを労働に使ってもらい食事だけはとれるようになったが、学校で勉強ができるのは一部の子どもだけ」と嘆いたのには驚かされました。また、ザンビアのアルベティーナさんは、「私の国でも働き盛りの人々の罹患率が高くエイズ孤児も多い。エイズ感染予防のコンドームの使用をすすめても教会が反対する。また指導者が指導技術を学ぶ機会がなく腕をこまねいているのが現状」と訴えました。 4時間目は、それぞれが各自の国で指導したいテーマに絞っての紙芝居の作成。絵は稚拙ながら、独創的、明解、意欲の溢れたものばかり。それぞれが舞台にあがって発表するのですが、被植民地から独立間もない国の人々の純真さ、真剣さ、明るさは、私たち日本人がとっくに失ったものであることを痛感させられました。 さて、紙芝居──作品A:見てください。私はHIVをぜんぶ違う色で塗りました。エイズウイルスはみんな違う。ケニア・タンザニア・マラウイ・スワジランド・ザンビア・ガーナのHIVから捕まえられないように逃げよう。コンドームを使って!作品B:私のはセックス・ワーカーへの啓発の紙芝居。客(買春男)が、“お金を足すからコンドームなしで”と口説いている。それに乗ってはいけない。3枚目は断わられてしぶしぶコンドームをつける客──といったもので、みんな大笑いのうちに研修は終ったのでした。 日本でも年間推計3,000人がHIVに感染しています。性感染症も激増。無症候の性感染症にかかっていると、HIVの感染率も数倍に跳ねあがります。性感染症とエイズの情報を、とくに10代、20代の若者に伝えたいと、性教育の講演に全国を飛びまわっている私です。 |
||||