北沢杏子のWeb連載

114回 私と性教育――なぜ?に答える 2013年8月

 

写真で見る、アフリカ・南米の研修員との3時間の学び

 毎年1回、国際協力機構(JICA)の委託を受けたジョイセフ(JOICEFP)の要請で、アーニホールでの『思春期ワークショップ』が開かれます。今年やってきたのは、ガーナ、レソト、リベリア、スワジランド、メキシコ、ドミニカ共和国、中国の7ヵ国の、セクシュアル・リプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)の研修員の方々です。
 毎年感じるのですが、それぞれ各国の家族計画指導官や医師、助産師、弁護士、スパーバイザーなど地位ある人々なのに、底抜けに明るく、知識欲旺盛なのに驚かされます。

 アーニホールは周囲の壁一面にマグネット式の性教育教材が貼りめぐらしてあり、研修員たちは興味津々。そこで教材を駆使しての「発達段階に応じた性の指導」の実習をすることに。それぞれの写真がその一部。

まず導入で私が「性教育の樹」の説明。性教育と聞くと、幹の左側に示した生理教育、生殖教育、処置教育を考えがちですが、右側に示したそれぞれの国の政策、宗教、俗習他による家父長制、一夫多妻制、DV、性虐待、売買春、性的マイノリティへの差別他を、どう性教育に結びつけ、解決を探るか?を問題提起します。

 

上は、お母さん人形から赤ちゃんが生まれる場面。お父さん役の彼が、妻(人形)の出産を励ましています。

アフリカ・サハラ以南の国々は、とかく男性優位社会。女性たちは「子どもは3人まで」と望んでいるのに、都会では5人、農村では7人の子どもを産まされており、妻が夫にコンドームの使用を頼むとDVに発展するとか。

 この写真は夫がコンドームを拒否すると、妻のハートがビリビリパチン!と砕けるロールプレイ。このあと夫が同意すると、もとのきれいなハートに戻ります(笑)。

 エイズの新情報。UN AIDS(国連合同エイズ計画)の最新情報によると、HIV感染のハイリスク第1位は、麻薬の注射のまわし打ち、第2位は、MSM(男性とセックスする男性)となっている。そこで、アナルセックスの害について説明(中央の図)。

 右上の脳のMRI画像は、父親の母親へのDVを日常的に見て育った子どもの脳の視覚野が、正常な子どもの脳に比べて、こんなに傷つくので注意!という教材です。

 3週間、日本各地を巡り、研修を終えたみなさんからの礼状には、「今回の研修は、生涯忘れません。私たちは全員、帰国後、力の限り、自国の若者のために、日本での学びを思春期保健活動に取り入れ、実施します」とありました。

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