北沢杏子のWeb連載
第121回 私と性教育――なぜ?に答える 2014年3月 |
「子宮頸がん予防ワクチン接種」の是非について考える そのT
私が仕事の拠点にしているアーニ出版ホールには、看護専門学校の学生さんたちが、フィールドワークとして私の講座を受けにきています。最近のテーマは「子宮頸がん予防ワクチン接種の是非について」で、質問は接種の必要性は?安全性は?副作用は?中止になった理由は?再開始するとは本当か?など。
近年、20〜30代の子宮頸がん罹患率が急増していることから、若い彼女たちにとって身近で切実な問題なのですね。ではワクチン接種の是非について考えていきましょう。
■子宮頸がんの罹患数は?死亡数は?罹患の原因は?
日本では毎年、約10,000人もの女性が子宮頸がんに罹患し、約3,500人が亡くなっています。特に20〜30代の罹患率が急増しています。
子宮頸がんを引き起こすウイルスはヒトパピローマウイルス(以下 HPV)で、ほとんどの女性が性行為によって感染しますが、自身の抗体(抵抗力)により、その90%は1年数ヵ月のうちに消失、HPVは検出されなくなるそうです。
子宮頸がんになる行程を説明すると、ふつう、性行為で生じた表皮の小さなキズから、HPVが性器粘膜の細胞に侵入して潜伏状態となり、それの持続状態(10〜20年)が子宮頸管部で起こると、がん化するとのことです。
HPVには100種類ものタイプ(型)がありますが、海外では、子宮頸がん罹患者の70%の人から16型または18型が検出されているため、予防ワクチンは16、18型をターゲットとして作られています。
ただし、日本人女性の場合、16、18型の検出は43〜58%で、罹患者の細胞からは16、18型以外の数々のウィルスが検出されています。つまり、日本人女性へのワクチンは、16、18型ワクチンだけでは、安心できないと言えます。
とはいえ、HPVは前述のように、性行為によって感染することは明らかなので、これを予防するには、性交体験前の12〜16歳前後の女子対象に、欧米と同じHPV16型と18型の予防ワクチンを接種しようというのが厚生労働省の考えです。で、2010年から全国の小学校6年生〜高校1年生女子への子宮頸がん予防ワクチン接種を公費とし、実施する区市町村が費用を負担する制度を開始しました。
予防接種を実施するにあたって、厚労省は被接種者に、次のように説明するよう指示しています。@性行為によるHPV感染が、子宮頸がんの原因となる可能性があるから。A子宮頸がんは性感染症ではあるが、淋病やHIVとは異なるタイプの疾患であり、その予防のため。Bいまは、性感染症であることは知らせず、誤解が生じない年齢になってから教えること―これに対して、医療関係者は@Aを、学校関係者はBを採用、と分裂したまま実施が始まりました。
ところがこの予防接種によって、次のようなことが続々と起こったのです。
■想定外のワクチン接種の副作用―続々と出現!
『中学入学、お祝いワクチン!』の名で、東京・杉並区の公費で受けた「子宮頸がん予防ワクチン接種」―この中学1年生の女子は、接種直後に激痛が走り、腕から体中に痛みが広がりました。2週間後には歩行困難の症状が出て車椅子となり、更に「計算ができない」「自分の名前が言えない」という脳への影響も発生。接種1ヵ月後に通学できるようになったと思いきや、2ヵ月後には頭痛、全身の痛みが再発し、再び通学できない状態とか。
この事態に対し杉並区は、最初こそワクチンによる被害を否定していたものの、区議会の追求を受けて「接種の副作用」と認め、全国初の「補償」を決定しました。
この後も、副作用が発生した女子たちが続出。熱が出た、歩けない、全身のけいれん、話ができない、などの訴えが、全国的に広がりました。次回に続く