北沢杏子のWeb連載
第123回 私と性教育――なぜ?に答える 2014年5月 |
働く女性たちのために「子育て支援制度」の充実を! そのT
2014年4月9日、経済協力開発機構(OECD)に、日本が加盟した50周年を記念して、東京でシンポジウムが開かれました。その席上、OECD事務総長のアンヘル・グリアさんは、日本の女性の働き方の問題点を指摘。「改善に動かなければならない」と強調しました。
曰く、日本の女性は、@労働参加率が低い。A賃金が、男性に比べて27%低い。B非正規雇用者の70%が女性。C労働環境が、男性に有利になるように設定されている(例えば男性のほうが容易に応じやすい残業、休日出勤、地方転勤制度などの設定)。
「しかも、育児ばかりか高齢家族の介護も女性の双肩にかかってきており、女性の60%が子どもが生まれたとき退職している」「教育レベルは女性のほうが男性より高いのに、日本の企業は、そのキャリアチャンスに投資しようとしない」と、企業に対しても厳しい批判を浴びせています。
さらに「日本政府は、保育所などの就学前の子どもへの施設に国内総生産(GDP)の僅か0.4%しか予算を投じておらず、デンマーク、フランス、スウェーデンの予算の1/3だ」と指摘しました。日本の女性労働力率は極端なM字型。つまり、出産と共に退職し、子どもが小学校中・高学年くらいになったら再就職するというのが一般的。これでは、不安定な非正規雇用に甘んじる他はありません。
最近『マタニティハラスメント』(溝上憲文 著、宝島新書)という本を読み、妊娠し産休を申請した女性たちが、上司から「この忙しい時期に、何をわがまま言っているんだ!」などといやみを言われたなど、数々のマタハラを受けている現実を知りました。
しかし、私はむしろ、同書の中の厚生労働省の産前・産後・育児・介護を行なう労働者の福祉に関する法律(以下、育児・介護休業法)について、「知らなかった」、「法律があることは知っていたが、その内容は知らなかった」と、50.3%の女性が回答していることに驚きました。
働く女性たちは、まずは、その法律を熟知し、法に明記されている働く者の権利を主張しなければ、M字型就労、キャリア放棄など、女性の意に反する労働率を変えることはできないと思います。※
改正「育児・介護休業法」(育児の部のみ掲載)2010年施行
● 育児休業法第5条〜第9条
労働者は、申し出ることにより、子が1歳になる(誕生日の前日)までの間、育児休業をすることができる。(対象:原則として、正規就労の男女労働者、および休業しても雇用の継続が見込まれる一定期間雇用者)。
次の@、Aの事情がある場合に限り、1歳6ヵ月まで育児休業ができる。
@保育所に入所を希望しているが、入所できない場合。
A子の養育をする者(両親、または親族)が死亡、負傷、疾病等により子の養育が困難になった場合。
● 子の看護休暇制度(法第16条の2、第16条の3)
小学校就学前の子を養育する労働者は、申し出ることにより、病気、怪我をした子の看護のために、1年間に5日まで休暇を取得することができる。
● 不利益取扱いの禁止(法第10条、16条、第16条の4)
事業主は、育児休業や子の介護休暇の申出や取得を理由として、労働者の解雇や、その他の不利益な取扱い(退職又は正社員を非正規社員とする変更の強要、降格、減給など)を行ってはならない。
● 勤労時間の短縮等の措置(法第23条、第24条)
事業主は、3歳未満の子の養育を行う労働者には、勤務
時間短縮等の措置を講じなければならない。
@短時間勤務制度―1日の所定労働時間の短縮/週又は月の所定時間の短縮/週又は月の所定労働日数の短縮。
Aフレックスタイム
B始業、終業時間の繰上げ、繰下げ。
C事業所内に託児施設を設置他。※※
上記、法律を知った上で、どのように女性の働く権利を主張すべきか?続きは次回に―。
※産前休業:「労働基準法」では、出産予定日の6週間前から出産休業を取ることができると規定しているが、年休を加算して、もっと長期に取れるよう申し出ることができる。
※※詳細情報は、各都道府県労働局雇用機会均等室に問い合わせること。