北沢杏子のWeb連載

126回 私と性教育――なぜ?に答える 2014年8月

 

どうなっている?「こうのとりのゆりかご」の現在 そのU

今後の対応策・各機関への要望は―

 慈恵病院に設置された「SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口」には、2014年1月1日から3月末日までに、397件の相談が寄せられたそうです。前回の個々の預け入れた理由を読むと、単に「こうのとりのゆりかご」が抱える課題ではなく、子どもの養護に関する様々な社会問題や福祉の連携問題の不備も見えてきますね。
 検証委員会が今後の取り組みとして、各機関への要望をまとめたのが下記です。

1 慈恵病院に対する要望
● 預け入れに至る前に相談につなぐ方策を、更に充実すること。
● 預け入れがあった場合においても、可能な限り相談につなぎ、子どもの身元判明に、あらゆる努力を行うこと。
● 母子の安全確保のため、自宅出産の危険性や、出産直後の長距離での移動の危険性の周知を、更に努めること。
● 「ゆりかご」の運用に当たり、児童養護を担う熊本県および熊本市とも十分に連携を取ること。

2 熊本市に対する要望
● 身元不明の子どもが預けられ、その子らの親を知る権利を侵害しているおそれがあるので、身元の判明のための調査を徹底してほしい。
● 他の児童相談所に移管された子どもを含め、預けられた子どもたちの現状の把握に十分努めること。
● 里親委託を更に推進するとともに、里親に対しても、子どもの成長と共にさまざまな課題が出てくることから、里親の支援を十分に行ってほしい。
● 「ゆりかご」への預け入れや、虐待を行った親への支援を推進すること。
● 育児困難な低所得世帯への援助(金銭的援助のみではなく、相談窓口やその他のサポート)について検討すること。
● 検証報告書で出された要望について、国(政府)への働きかけを続けてほしい。

3 国(政府)に対する要望
● 支援を必要とする母子の把握や、遺棄された子どもの身元判明のため、各医療機関で出生した子どもについて、市町村への出生届が完了しているかどうかが、確認できるような全国的なシステムの導入。
● 事前に公的相談窓口等への相談があれば、預け入れを回避できた事例も多くあるので、妊娠・出産や子育てに関する相談窓口や支援制度の周知・広報に努めること。

4 全国の行政・関係機関に対する要望
● 「ゆりかご」への預け入れ前に、公的機関への相談を行っている事例が多くみられることから、機関相互の連携を図り、十分な受け入れ体制で臨んでほしい。
● 「ゆりかご」に預け入れた児童を、その後受け入れた児童養護施設においても、ゆりかごに預けられた経緯を十分にふまえ、子どもの最善の福祉を考えて対応してほしい。
● 「ゆりかご」への預け入れや、虐待を行った親への支援のしくみを確立してほしい。
● 育児困難な低所得世帯への援助(金銭的援助のみではなく相談窓口やその他のサポート)について検討してほしい。
● 産科医療機関においては、社会的ハイリスクの妊娠や出産に対しての注意深いフォローアップと、その情報を行政機関へ連絡するなど、連携を行ってほしい。

5 マスメディア関係者に対する要望
● 社会に対して「安易なゆりかご利用」に対する警鐘を広く鳴らすとともに、報道における「ゆりかごの呼称」(あかちゃんポストなど)への配慮を求めたい。
● 妊娠・出産・子育てに関する相談窓口、里親制度等について関心や理解を促すための報道をお願いしたい。

6 地域社会の人々に対する要望
● 地域においても、出産・子育てについて課題を抱える人たちに対し、医療機関・行政機関と連携し、支えとなる研修を行い、地域ぐるみの協力をお願いしたい。

性教育実践者としての私からの要望
 日本性教育協会の青少年の性行動(2012年、第7回調査報告)によると、現在、高校生の性交体験は男子15%、女子23.6%。中学生は男子3.8%、女子4.8%となっています。なのに、学校教育の中での「性教育」は殆ど行なわれていない。
 「望まない妊娠はしない、させない!」という人権教育を基本とした避妊教育を、性教育先進国といわれる北欧の国々のように、中学校・高校で徹底的に教えれば、年間20.659件の10代の人工妊娠中絶数も、「ゆりかご」へのあかちゃん預け入れも激減するに違いないと私は確信しています。
 10代で人生の挫折を味わせないためにも、ぜひ、学校教育の中に性教育を!


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