第14回 

 私と性教育─なぜ?に答える

 


 「こわれ者の祭典」左からDAIGO,手塚眞(ゲスト映画監督)、カッコ、金長男、日及光司の皆さん
   (東京・新宿歌舞伎町/ロストプラスワンにて)

 

2005.4

『病気だよ、全員集合!こわれ者の祭典』

性を語る会代表  北沢杏子

 
       
 

     面白くって、楽しくって、ためになるトーク・イベントを東京・新宿の歌舞伎町に観に行きました。アルコール依存症自慢・アダルトチルドレン自慢・摂食障害自慢・引きこもり自慢・ノイローゼ自慢・強迫行為自慢・脳性マヒ自慢…とチラシに堂々と書いてあるんだから、私がここに書いたって怒らない連中なのです。

 開幕早々、脳性マヒ自慢のDAIGO君は、赤いハッピに江戸前の豆しぼりの鉢巻という粋な姿でロックンロール風のダンス(いつまでもやめないのが玉にキズ)を披露してくれたけれど、この御一行様は新潟県から、はるばるやってきた元気印の『お笑い集団NAMARA』だったのでした。NAMARA(ナマラ)とは、新潟弁で「とても」とか「すごい」とかいう意味だそう。

 「何かパフォーマンスをしたい」と相談を受けたのを機に'02年、代表の江口歩さん(40)を中心に立ちあげた自称「こわれ者芸人」は、いまや各地で引っ張りだこなのだそうです。

 「障害者や心に病を抱える人を笑っちゃいけないという風潮が、逆に彼らとの距離を生み、差別が生じている」「一緒に笑うことで共感が生まれ、理解につながる」と代表の江口さん。

 出演者がずらーっと並んでのトークでは、強迫神経症で何度もリストカットに追いこまれたというアイコさんが、強迫観念と妄想に押しつぶされそうになると「延々と九九を唱えて乗り切るんだ」と語り、観客たちは、その病の厳しさに理解を深めることができるのでした。

 また、脳性マヒで言葉が聞きとりにくいDAIGO君の漫才には「何を言ってるかわからんよ、おまえ」

と相棒が突っこみを入れて会場を湧かす。かと思うと、マイクの握り方に「マスターベーションのそれと間違えてんじゃないか」なんてズケズケ、アッハッハ。長身の男性だったと思われる(性同一障害の)C子ちゃんが、チョー短いスカートにセーラー服、乙女チックなメーキャップで現れると「スカートの中を携帯で撮ったお客さん、ダメよ」なんて言って、またまた会場が爆笑に包まれるのでした。

 こんな世の中になればなあ…と思っていた矢先、福岡県の知的障害者施設『カリタスの家』での、職員による虐待事件が社会問題としてクローズアップされました。

 殴る、蹴る、布団袋に詰めて放置する、熱湯のコーヒーを無理やり飲ませヤケドをさせる、入所者の口座から勝手にお金を引き出す…とても信じられない虐待です。

 「職員が生の唐辛子を男性に食べさせ、土壌改良に利用される木酢液を飲ませて、唐辛子の汁や粉のついた手で目をこすって苦しそうに涙を流す障害者を、笑いものにした」といった例も発覚しました。

 障害者の母親の1人は、わが子を人質に取り、「不満なら、いつでも出ていけばいい」という施設長の声に脅えながら、県の聴取でも彼らの悪口については口をつぐみ、悶々とした毎日を過ごしてきました──と訴えています。

 こうした弱者への虐待について、厚労省は虐待防止法の勉強会を発足、千葉県・宮城県は障害者差別禁止条例の検討を始めた、というのですから、遅い、遅い! 

 障害者の明と暗について報告しました。


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