北沢杏子のWeb連載

140回 私と性教育――なぜ?に答える 2015年10月

 

いまどきの男子へのメッセージ 健康な精子を造ろう!
―岩室紳也先生との対談―そのV

北沢 というわけで、1942年にペニシリンが開発されるまでは、“性感染症のせいで不妊”というのが多かったと、この本(『陸軍と性病』)に書かれています。
岩室 戦争で男性が不妊症になった原因の一つは性感染症ですね。それから、もう一つは、戦争末期の栄養失調、これが大きいと思います。人間の体って、よくできていて、栄養失調になると、生命を維持するために、生殖機能から潰していくんです。まずは「生きなければ!」という状況では、生殖機能は必要ないですからね。男性は、精子を作る能力が落ちる、女性なら排卵しなくなる。でも、現在は、不妊の原因が男性の性感染症による「精管の通過障害」などの場合は、直接、精嚢に機械を入れて、精子を採取することができます。
北沢 女性だけが「卵子の採取」で大変かと思ったら、男性も「精子の採取」など、大変なんですね!

■正しいマスターベーションのすすめ!
岩室
 もっと深刻なのは、最近、正しいマスターベーションの方法を知らない男子が増えている。床に腹這になって性器をこすりつける「床オナ」をする男子が増えているんです。
 床オナをするようになるきっかけは2つあって、1つは痒いからなんですね。毎日、お風呂に入ったら、ペニスの先の包皮を剥いて洗わないから痒くなって、床にこすりつけると気持ちがいい。そこに性的な刺激も加わって、射精が起こるというのが一つ。もう1つは、単純に、ペニスを強くこする快感です。これが習慣になると、女性の腟では射精ができなくなります。
北沢 えっ!本当ですか?
岩室 なぜかというと、床にこすりつける方法だと、相当に強い刺激で射精をすることを覚えてしまうので、腟の中で射精ができなくなってしまう。ですから、手を使う自然なマスターベーションの方法を伝えることも必要でしょう。

■小さいうちから、包皮をめくってよく洗おう!
北沢 先生のこのご本『イマドキ男子をタフに育てる本』(日本評論社 2013年 刊)では、「男の子は、小さいうちから包皮を剥きなさい」と……。
岩室 はい。なぜかというと、清潔のためなんです。ミミズにしょんべんかけたら、おちんちんが腫れると云われているでしょう。要するに、汚い手で触るから、ばい菌が入って腫れるんです。だから、お風呂に入ったら、必ず「包皮を剥いて洗いなさい」と言っています。
北沢 私がいま講座を行っている看護専門学校の男子学生に、「いつ頃から、自分でペニスを持っておしっこができるようになった?」って聞くと、だいたい3〜5歳ぐらいですよね。それまでは、トイレのあっちこっちにおしっこが飛び散って、お母さんに叱られたなんて……。
 だから、自分でペニスを持っておしっこができるようになったら、父親とお風呂に入って、いっしょに剥いて洗うってことを習慣づけたらどうでしょうね。
岩室 本当はそれが理想なんですが、お父さんがいない家庭も多いですし、お父さん自身がそういうことを習っていないことが多い。
北沢 昔から「男の子は自然に覚える」と言われていて、性器の洗い方ひとつさえ、情報が行き渡っていないんですね。
岩室 友だち同士、そういう話もしないし、学校は、いま、ほとんど性教育をしないですもん!
北沢 自分の精液を顕微鏡で見る授業とか、ペニスの包皮を剥いて洗うってことを、学校で教えたらいいのにね(笑)。
岩室 そう、教科書に「正しいマスターベーションとは、手で亀頭部を刺激して」とか、「ペニスは、包皮を剥いて洗いなさい」とか、そういうところまで教えなきゃいけない時代だとは思いますが、文部科学省がそこまで認めるかどうか?
北沢 来年から「道徳」を正科に格上げするようですが……、
岩室 道徳よりもチン徳の方が大切です!(笑)。

■結び―岩室先生の「若い男性へのメッセージ」
北沢 最後に、若い男の子たちへの、メッセージーを!

@タマは温めるな、冷やせ。脚を長く見せようとして、きついジーンズを穿くな。パソコンのひざ置きも、やめよう。
A三食きちんと食べる。栄養がかたよると、精巣の血流が悪くなって、いい精子が作れなくなることを知ろう!
B「老化」は防げないから、子どもが欲しいなら、早めに結婚して、子どを持とう。


北沢 ……とは言っても、若者にとっては、なかなか就職もできない、賃金も低くて結婚できない、子どもができても、保育所が満杯など、育てにくい現実がありますけれど……。
岩室 いや、立派な職業について、キャリアを積んで、収入をあげて、家を購入してから子どもを持とうなんてことを考えるんじゃなくて、価値観を変えてみてはどうか?
 先ずは「家族をつくろう」というところから出発して、家なんかアパートでもいいから、、共働きでがんばって、職場での有給の出産・育児・介護休業を獲得して、若いうちに子どもを産む―そこに「新しい幸せの道」が開かれるのでは?と思っています。
北沢 そのとおりですね。女性も男性も、「30歳までに第一子をつくろう!(第二子を望むなら、その2〜3年後までに)」。まずは、“幸せ”の価値観の転換が必要だという、岩室先生の熱いメッセージでした!

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