北沢杏子のWeb連載

143回 私と性教育――なぜ?に答える 2016年1

 

選挙権年齢18歳引き下げと、喫煙問題最新情報

■成人年齢引き下げ―酒・タバコ「18歳から」 紛糾!
 2015年6月17日、選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる「改正・公職選挙法」が、参院本会議で「全会一致」可決、成立。施行は1年後の、今年夏の参院選から「18歳以上」が投票できることになった。
 この法改正に伴って、「喫煙、飲酒にかかわる成人年齢をどう線引きするか?」について、9月20日(2015年)、自民党「成年年齢に関する特命委員会」の議論は紛糾した。
 提言案には、「成人(大人)を、18歳からとする」となれば、「大人になった18歳が飲酒・喫煙を制限されることは、社会的に保護が必要とはいえ、適当ではない」と指摘。「世界の主要国は、16〜18歳から飲酒・喫煙を認めている」として、日本でも18歳から認めることが妥当とした。
 これに対し、専門家は反対する。「飲酒・喫煙による医学的な影響を慎重に検討すべきだ」「喫煙者は肺がんなどの割合が高くなる」「“一気飲み”で死亡する学生もいる。なぜ、18歳で解禁するのか」と。また、学校関係者からは、「喫煙・飲酒は非行の温床になる」との反対意見も殺到した。

 誰が聞いても納得できる専門家の反対意見が、自民党特命委から出されなかった背景には何があったのか?委員会によると、「健康や教育への影響を調べるべく、専門家から意見を聞くべきだ」との声も出ていたが、「日程が合わなかった」「医師会などからヒアリングすれば、反対されて結論が出ないため、呼ばなかった」「酒類販売業界からの支援も関係しているかも」と弁解。公明党にも慎重論が多く、自民党は今後、提言案を作り直すことにしているが、両論併記の内容となる模様だ。

 「厚生労働省・2013年の調査」によると、高校3年生の喫煙率は、男子5.6%、女子2.5%。飲酒率は男子16.1%、女子16.6%となっており、厚労省は2020年までに、20歳未満の喫煙率・飲酒率をゼロにすることを目標に掲げている。
 “たばこと健康問題”に詳しい、産業医大の大和浩教授は、「現在、世界的に喫煙できる年齢を引き上げる動きが出てきている」と提言。もし、自民党特命委員会の提言が認められれば、同じ高校3年生の間でも、18歳の誕生日がくれば喫煙許可、誕生日前の生徒は喫煙禁止となり、「学校での指導は難しく、生徒間も混乱するだろう」 「これまでの学校の禁煙環境を整えてきた努力も無駄になる」と警告している。
 というわけで、喫煙の害の最新情報を取材するため、「タバコ問題情報センター」代表理事の渡辺文学さんのオフィスを訪ねました。以下はその対談の記録です。


■喫煙の害―最新情報を取材する!
北沢
 中学生・高校生対象の「タバコの害」について、お聴きしたいのですが。
渡辺 はい。中学生、最近では小学生の頃からタバコを吸うような子どもが増えています。しかし、昔と比べると、国の政策、自治体の政策、医学団体の取り組みが盛んになっています。
 また、学校が「敷地内全面禁煙」という規則を作って、学校内ではタバコが吸えなくなり、吸わない先生も増えてきました。ところが世の中には、まだまだ、タバコが溢れています。例えば、「タバコを吸いたい」と思うきっかけが、映画やテレビドラマの中で、格好いいタレントが吸っていると、どうしても真似したくなる。けれども、そのタバコの害については、正しい情報がまだまだ、伝わっていません。

■タバコの煙の中には、健康を害する膨大な数の化学物質が!
渡辺
 タバコの煙の中には、約4,000種類もの化学物質が含まれている。そして、その4,000種類の化学物質の中に、ホルムアルデヒドやベンツピレンをはじめとした発がん性物質が、200種類以上も含まれています。
 そういうものを、自分のからだの中に、とり入れるわけですから、健康にいいわけないですよね? 特に、中学生、高校生の皆さんは成長期ですから、健康な体の発育に非常に悪影響が出ます。心臓、肺をはじめ、頭のてっぺんからつま先まで……、
北沢 つまり、タバコは全身病!と言われていますよね!
渡辺 そう、まず心肺機能―スポーツ能力の低下です。タバコを吸うと、肺や心臓への酸素の供給が少なくなります。これは、タバコの煙の中の一酸化炭素が、血液中のヘモグロビンと結びつくからです。また、ニコチンの作用で血管が収縮し、酸素が充分に行き渡らなくなります。
 特に、若い世代がタバコを吸うと、運動機能、瞬発力が衰える。長距離ランナーであれば記録が伸びない、水泳選手なら息が続かなくなる、となります。
北沢 心臓や肺には、どんな影響がありますか?
渡辺 心筋梗塞とか心不全などの原因になります。血管が収縮して、血液循環が悪くなってしまう。血液の循環が悪くなると、新鮮な血液が脳に行かなくなるわけですから、記憶力、あるいは勉強の機能も衰えてきます。
北沢 タバコが病みつきになるのは、どうしてですか?
渡辺 タバコの煙には、ニコチンという物質が含まれています。ニコチンというのは非常に依存性が強くて、ヘロインとかコカイン、マリファナなどの麻薬と同じくらいの依存性があることが、多くの研究でわかってきました。
北沢 中学生の中には、自分は吸いたくないけれど、仲間の中で「オマエ、吸ってみろよ」なんて言われて、断われなくて吸ってしまうということもあるようです。
渡辺 そう、ピア・プレッシャーと言われている問題です。断わりきれず、ついつい吸ってしまう……。最初の一本から「タバコがうまい!」と思う人はいません。ところが、2回3回と、むせながらでも吸っていると、耐性ができてきて、依存性がでてくるようになってきます。ですから、「最初の一本に手を出さない」ことが大切です!

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