北沢杏子のWeb連載
第145回 私と性教育――なぜ?に答える 2016年3月 |
喫煙問題最新情報 そのV 「たばこ規制枠組条約」とは
■世界保健機構の「たばこ規制枠組条約」とは?
北沢 世界保健機構(WHO)の「たばこ規制枠組条約」(以下 FCTC)について教えてください。
渡辺文学 はい、この条約は2003年5月21日、ジュネーブで開催されたWHO第56回総会で採択され、2004年11月29日、批准国が40ヵ国に達したので、その90日後に「発効」しました。この条約は現在、世界180ヵ国が批准しています。
批准国は、“たばこの削減”に向けて、広告・販売の規制、密輸対策、健康被害に対する対策他が求められています。日本は、2004年3月9日にニューヨークで署名。衆議院、参議院が承認し、2004年6月8日、受諾書を国連事務総長に寄託して、翌2005年2月27日に発効されました。
北沢 えっ、日本は批准国とは思えない現状ですよね?「批准国は、パッケージ両面の50%以上、最低でも30%を使い、たばこの害を知らせる義務がある」はずなのに、日本のたばこには、このような警告の写真やイラストなどが入っているたばこのパッケージを見たことがない!
渡辺 そればかりか、同じたばこでも、輸出用のパッケージには写真を載せているのに、日本で販売している同じたばこには、小さな文字の警告文だけです。
北沢 ひどいFCTC違反ですね!
渡辺 問題なのは、JT(日本たばこ産業)は、“たばこ事業法”をもとに財務省(旧・大蔵省)が仕切っていることです。本来なら、たばこは健康被害の大本なんですから、監督官庁として厚生労働省に移管すべきなんですが……。
北沢 それがどうして財務省に?
渡辺 日本政府がJTの株を30%以上保有し、筆頭株主になっているので、厳しいことが言えない……、
北沢 えっ、筆頭株主に?
渡辺 はい。ですから、現行の「たばこ事業法」を撤廃して、FCTCのガイドラインに添った「たばこ規制法」を制定すべきなのに、しようとしない。国際的にも問題です。
北沢 早速ネットで調べてみます。有意義なお話を、ありがとうございました。
以下は、私が調べた資料および取材報告です!
日本たばこ産業株式会社(JT)の沿革および政府との結びつき@JT:たばこ、医薬品、食品、飲料の製造・販売会社。「日本たばこ産業株式会社法」に基づき、財務省(旧・大蔵省)所管の特別会社(旧・特殊法人)として、1985年4月1日に、旧・日本専売公社※から業務を継承。
A 「たばこ事業法」により、国産の葉タバコ全量買取りが義務づけられる一方、たばこ製造の独占が認められている。従って国内唯一のたばこ製造会社。他に医薬品、食品、飲料の製造販売も行っているが、売上高の80%以上がたばこ(輸出も含む)。
B海外戦略:1999年に米国のRJRナビスコ社、2007年に英国のギャラハー社を買収して、世界70ヵ国の販売網を獲得。東証一部上場企業の時価ランキングを見ると、時価総額9.1兆円で、第1位のトヨタ自動車につぎ、第5位に位置づけられている。
C2010年10月1日から始まった「たばこ税」の増税により、財務省から「たばこ小売定価変更」の許可を受け、収入が激増している(マイルドセブンが300円から410円に)。
DJT株の巨大な配当金:たばこ産業は、生産から販売まで、すべて財務省の独占下にあり、財務省はこの既得権益を手離そうとしない。左欄で問題視された、パッケージの50%の警告写真の不掲載などの「たばこ規制枠組条約」違反は、日本政府とJTとの結びつきにあることがわかるだろう。
電子タバコ販売店を探して―
たばこ問題情報センターの取材を終えての帰路、ネットで探した電子タバコ販売店に立ち寄る。渋谷の繁華街の路地を入ったところに堂々と看板があった。
中に入ると、10代の少年・少女が飛びつくようなデザインのタバコの自動販売機があって、定価はどれも430円。
店員さんに聞くと、女の子が飛びつくタバコには、オレンジ味、コーヒー味、チョコレート味などのタバコだとか。それらは手の届くところに、可愛らしく並べてあった。
「電子タバコはありますか?」と聞くと、「はい、ありますよ。いま、ちょうどスイッチを入れたところ。試してみますか?」と差し出してくれた。電子タバコの使用法は、タバコに似た形の吸引器の中に、専用のカートリッジを差し込み、これを充電式バッテリーにつなぐと、カートリッジ内の液体が電熱線の発熱で霧状化する。その微粒子を吸引するらしい。値段は、充電式バッテリー、吸引器、カートリッジ一箱一式で、6,000円以上と高値だった。ネットで「ニコチン液」を個人輸入し吸引するという問題も生じており、厚生労働省は、多量の発がん性物質が含まれているとして、警告している。こんなに身近に「電子タバコ」があるとはオドロキだった!