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性教育の樹──私の概念と実践(1) 性を語る会代表 北沢杏子 | |
1965年から40年間、性教育ひとすじに研究と実践を積んできた私の性教育の理念を図式化したのが右の絵です。内容は、小学校高学年から中学校までの子どもたちをもつ保護者と指導にあたる先生方を対象としています。 ■性教育ってなんだろう? 下から見ていきましょう。「からだを清潔に・月経の手当」などの一群は、それだけの指導で終わるなら、処置教育にしか過ぎません。「月経・射精」の一群は生理教育、「性交・妊娠・出産」は生殖教育にしか過ぎないのです。 では、どうしたらいいか?これらを科学的に正確に伝えながら、ひとつひとつ、自分のからだは自分で守る保健行動の選択(左上にありますね)に繋げるように話していってほしい。そうすれば、まったく意味が違ってきます。 保健行動の選択を自己決定できるかどうかは、とくに、望まない妊娠や性感染症、援助交際などが問題として浮上してくる中学生・高校生にとって、重要な「健康の自己管理」のポイントになってきます。 つぎに右半分を、上から見ていきましょう。もし、家父長制に縛られている家庭でDV(ドメスティック・バイオレンス=夫が妻を殴る、罵声を浴びせるなど)が行なわれていれば、それを目撃しながら育つ子どもは、児童虐待防止法による被虐待児になり、アダルトチルドレンの遠因にならないとも限りません。また、妻へのセックスの強要もDVであり、その結果、中絶を余儀なくされたり、性感染症の感染へと繋がる例も少なくありません。「私は結婚をパートナーシップ(協力・共同体)と名づけたい」と言ったのは、作家のディザートですが、そうした対等な関係の結婚観をもてるよう、性教育の中で繰り返し伝えていきたいと、私は考えています。 つぎに、その下のマスメディアの影響を見ていきましょう。専門家によると、小学校高学年から中学生の時期に、「性」を商品化したポルノ雑誌やアダルトサイトなどが大脳にインプットされると、男子・女子ともに、歪められた性の価値観が刷り込まれてしまうということです。職場でのセクシャルハラスメントや、大学生の集団レイプ事件、「援助交際」という名の・もまた、過剰な性情報を垂れ流すメディアの影響といえるのではないでしょうか。 さらに下のほうへ目を移してみましょう。HIV/エイズの患者・感染者、同性愛者、障害者、老人、TG/TS (トランスジェンダー・トランスセクシュアル)他の、性的マイノリティーに対する差別のない社会、それぞれがあるがままに生きる社会を構築しようと呼びかけるのも性教育の重要な仕事です。 (6月号へ続く) |