北沢杏子のWeb連載
第157回 私と性教育――なぜ?に答える 2017年3月 |
保育園・幼稚園児に「国旗・国歌」押しつけ
安倍政権「愛国教育」の総仕上げか?■3歳以上の幼児に国旗・国歌、押しつけ!
2月14日(2017年)、厚生労働省が公表した「保育所保育指針」の見直し案は、3歳以上の幼児を対象に「保育所内外の行事で国旗に親しむ」「正月や節句などの行事に国歌、唱歌、わらべ歌に親しむ」だった。同じ2月14日、文部科学省も「幼稚園教育要領」案で、同じ文言を公表した。
つまり、保育園児も幼稚園児も、来春から国旗・国歌に親しむ子どもに成長させようという、安倍政権の愛国教育方針である。
全国保育団体連絡会の実方伸子副理事長は、「“国とは何か”を理解できない幼い子に、国旗や国歌を形だけ教え込むことに意味はあるのか」「幼児教育への国家統制が、いよいよ強まったという印象だ」と危惧している。
■1999年「国旗国歌法」成立―全国の小・中・高校に―
全国の公立小・中・高校には、「国旗国歌法」成立前の1989年、学習指導要領(改正)で、「入学式、卒業式には国旗を掲揚し、(起立して)国歌を斉唱するものとする」と規定、大半の学校が従ってきた。
しかし、1999年「国旗国歌法」公布・施行以降は、厳守!卒業式、入学式の国歌斉唱時に起立しない教職員は、“職務命令違反”で処分された。東京都は、「処分方針」を通知した2003年度以降、450人を停職、減給、戒告処分している。
大阪府では、2011年6月、当時の橋下知事が、国歌斉唱時の起立を求める「君が代起立条例」を成立させ、更に起立しても歌わない教職員の、口元の開け閉めをチェックするまでに及んだのだ。
■「国旗国歌法」“大学は自主判断に任せる”としてきたが……
次は大学の番だ。「それぞれの大学の自主判断に任せる」としてきた方針に対し、安倍首相は2015年4月、入学式や卒業式で国旗・国歌を扱っていない国立大学について、「(大学運営が)税金で賄われていることに鑑みれば(略)正しく実施されるべきではないか」と発言した。
これに対し、「学問の自由を考える学者の会」の池田了・名古屋大学名誉教授は、「文科省の考えに従わない時、大学は予算を削られる恐怖感に立ちすくんでいる」「国の顔色を見ていては、まともな学問は期待できない」と述べている。
というわけで、小・中・高校から大学まで強制的な国旗・国歌法は拡大したが、ここにきて、遂に幼稚園、保育園まできた今回の「愛国教育」押しつけである。
■国有地売却問題―国会で疑念!
……とぼやいているところに、園児に毎朝「教育勅語」を唱えさせ、「君が代」「海行かば」の合唱をさせる幼稚園があるとの報道に度肝を抜かされた。大阪淀川区の塚本幼稚園だ。
この幼稚園を経営している学校法人「森友学園」(籠池泰典理事長)が、今春開校する「瑞穂の国記念小学校」の用地として購入した、大阪府豊中市内の国有地の問題への疑念が、2月22日(2017年)、国会で論戦の焦点となった。
国有地を処分する際は、「国有財産地方審議会」の意見を尊重しなければならない規定があるにもかかわらず、財務局が押し切って、1億3400万円で売却したとか。国会では野党が“売却の経緯や価格(値段)の積算根拠”を鋭く追及した。
この土地に隣接する、ほぼ同じ面積(9400平方メートル)の国有地を、国が豊中市に売却した額は、約14億円だったのだから、1億3400万円とは?誰だって“怪しい”と思うだろう。財務局は、「地下に埋まっていた廃材、生活ゴミの撤去費用8億1900万円を控除した額だ」と説明。これに対し、ゴミの搬出を請け負った業者は「同費用の一部しか作業実態をしていない」と証言している。
■安倍政権―愛国教育の総仕上げか?
さらに驚かされたのは、同小学校の名誉校長に、安倍普三首相の妻の昭恵氏が就いていたのである(現在は辞任)。これについての国会での安倍氏の答弁は、「(妻の名誉校長の件については)承知しているし、妻から、学園の先生の教育に対する熱意はすばらしい、という話をきいている」だった。
というのも、問題の森友学園・籠池泰典理事長は、安倍首相の憲法改正を後押しする「日本会議」のメンバーなのである。
今回の保育園・幼稚園児への「日の丸」「君が代」の押しつけをはじめ、この一連の奇っ怪な教育問題―安倍政権の愛国教育の総仕上げは、ここまできたか!と、全身に暗雲が立ちこめる日々である。