北沢杏子のWeb連載
第178回 私と性教育――なぜ?に答える 2018年12月 |
いまこそ思春期の子どもたちに伝えたい!「性と生」
―性教育バッシングの中で―Part 2
2018年10月20日、「性を語る会(1987年発足)」は、上記のタイトルの第114回シンポジウムを開催しました(於 アーニ出版ホール)。
性教育バッシングの現在だからこそ、その必要性を訴える保護者、教員、小・中学校への「いのちの出張授業」を行っている看護師、助産師、語る会の会員、元衆議院議員も加わって、会場は熱気ムンムン。東京新聞の記者、小形佳奈さんも取材に駆けつけました。
そして、当日のパネリスト「にんしんSOS東京」の土屋さんと私へのインタビューを元に、子育てサイト「東京すくすく」部門の性教育関連記事が「性教育を考える」のタイトルで(11月20日、23日)掲載されたので、要約して転載します。
■性教育を考える 上 学校が性交を「教えない」弊害
予期しない、望まない妊娠によるとみられる中絶や虐待死が後を絶たない(略)。「にんしんSOS東京」副代表理事で助産師の土屋麻由美さんは、「事態を防ぐには、正しい知識を幼少時から教えることが大切」と訴える。
昨2017年度の20歳未満の人工妊娠中絶件数は14,128件。同じく20歳未満の母親から生まれた子どもは9,898人。虐待死した子どもは110人で、最も多いのが生まれたその日に亡くなるケースで、25人がトイレやロッカーに遺棄されるなどして命を落とした。
妊娠にまつわる相談で、土屋さんが痛感するのは若い世代の性知識の乏しさだ。その理由は「学校での性教育が不十分なため」という。(略)「教えると、性交をかえって助長する」との指摘もあるが、「教えないとインターネットのアダルトサイトなどで得た誤った性知識のまま、デートDVや望まぬ妊娠など、悲惨な結果を招きかねない」。
性交や妊娠の仕組みだけでなく、お互いの性的同意、相手への思いやりも含めた人権教育としての性教育の必要性を説く(後略)となっている。
■性教育を考える 下 親から子へ 家庭ではどう伝える?
子どもと性の話をしたい時、役に立つのが性をテーマにした絵本や本だ。分かりやすい文章、イラストが理解を助けてくれ、長く読み継がれている(小形記者)の前文に続き、童心社、岩崎書店、アーニ出版の絵本や本などが紹介されている(紙幅の都合で、私の部分だけ転載します)。
■「イラストが理解を助ける絵本はおすすめ」と北沢杏子さん
小学校中学年以上の児童に二次性徴をイラストなどで解説する「男の子のからだの絵本」「女の子のからだの絵本」(アーニ出版、各巻1,500円+税)発刊から18年を過ぎても版を重ねる。
本文を手がけた同出版社共同代表の北沢杏子さんは、1969年に同社を設立。性教育に関する書籍の出版、性教育教材制作に約50年携わってきた。
親と先生のためのQ&Aシリーズ1巻「幼児から小学校高学年まで」、2巻「小学校中学年から中学生まで」、3巻「知的障害もつ子どもの性教育・性の悩みQ&A」(各巻 1,300円+税)は、命の誕生や性被害防止、妊娠などに関する子どもの質問や悩みへの回答集(略)。3巻は「知的ハンディをもつ子の異性への関心、避妊などに関する疑問に答える書籍はほとんどない。シリーズの中でも特に好評」という。
北沢さんは「2000年代前半からの性教育バッシングに押され、教科書出版社は萎縮、教員も指導に自信がない」と性教育の現状を語る。「子どもの権利条約第3条の子どもに最善の利益を!を念頭に、虐待や搾取から保護される権利を守るためにも、いざというとき『ノー』と言うこと、逃げることなどをしっかり教えていかなくては。絵本や本がその助けになる」と訴えている。