第26回 私と性教育──なぜ?に答える      2006.4  

 

 

  知っていますか? 性教育バッシングの現状

                                                 性を語る会代表  北沢杏子

  性教育バッシングの歴史という、あまり嬉しくない話を今回は記録しておこうと思います。
 2003年9月11日、都教育委員会は、都の養護学校関係者116人を処分しました。その発端は、日野市の七生養護学校低学年の子どもが電車の中で、日ごろ学校で歌っている「からだの歌」を歌ったこと、それを聴いた乗客の一人が都議の某議員に知らせ、彼が、7月2日の都議会で「過激な性教育を許してよいのか」と一般質問。7月4日、産経新聞記者らを連れて学校を視察。新聞は、教材に使っていた人形の服を脱がせて撮った写真と共に「不適切な性教育教材」と公表。続いて「アダルトグッズが散乱する教室」などと週刊誌も書きたてて、人々の眉をひそめさせました。
 7月9日、都教委による七生養護学校全教員の聞き取り調査、8月1日、学校経営アドバイザーが着任。9月11日、冒頭で書いた学校管理者37人、教員65人、教育庁関係者14人の大量処分とエスカレートしていきます。
  
 ついで、'04年12月26日、都教育庁指導部指導企画課長名で『学校における性教育で使用する教材などに関する調査表』が配布されました。「性交や出産シーンなどが示されている幼児や児童向けの絵本や掛図、同じくビデオなどの視聴覚教材、性器のついた人形、その他、学習指導要領及び発達段階を踏まえていない、不適切と判断される教材・教具」を、「保有している」「していない」に○印をつけ、学校名、記入者の職・氏名を書いて提出せよというものです。

 教科書改訂年('05年)4月5日に提出された小学校4、5年生の某社『保健』エイズのページ(図)の「HIVは感染している人の血液や精液、ちつから出される液などが、ねんまくやきず口などから入ることでうつります」が、4月20日の検定後には、「感染している人の血液などが、きず口などからはいることでうつります」と改訂されています。

 


 つまり、性交で感染することを避けたわけですね。また、同じ年の教科書検定で、ペニスはいんけいに、ワギナはちつに改められました。
 決定打は、'05年3月4日の参議院予算委員会での山谷えり子議員の、性教育資料を掲げての「男女ごちゃまぜの性教育・結婚否定の家庭科教育・ジェンダーフリー思想による男女共同参画社会ぶちこわし教育──これでよいのか?」の猛攻撃に、小泉さんも遂に「この図入りのはひどいですね、ここまで教える必要があるのかどうか」と答弁してしまったことです。

 これを受けて同年4月、全国的な『義務教育諸学校における性教育実態調査』の実施。同年の12月22日には公表となりました。紙幅の都合で、公表数は割愛しますが、これでもか、これでもか、という矢継ぎ早の調査や通知、首相の国会答弁を受け、某県教育委員会は、「授業では妊娠の経過を取り上げないこと(性交の表現が必要になるから)」「性器の名称を教えるのは小学校4年生以降に」という“性教育手引書”を作成したそう。

 現在、中学3年で10%が、高校3年で40%の生徒が「性交体験あり」と回答し※1、10代の望まない妊娠中絶数は年間46,500件※2、性感染症の中のクラミジア感染率は、16歳女子で17.2%※3と、欧米諸国の同年齢女子の2〜3%に比べてダントツという結果が出ています。 性教育をしない日本──いったい、どうなっていくのでしょうか?
               ※1 全国高等学校PTA連合会調査
            ※2 厚労省母体保護統計
            ※3 国立保健医療科学院疫学部調べ




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